何点取れたかのかわからないまま志望校を決めなければならない
再度、柴山大臣のことばを思い返そう。大臣は、採点業務にあたっては「適正な試験等によって質の高い採点者を確保すること、必要な研修プログラムを行うことなど、採点者の質を向上するための取組が求められる」とし、「多層的な組織体制と品質チェックの充実等によって採点の質を確保することが重要だ」と述べていた。
けれどもこれは逆に言えば、大学入学共通テストの記述問題の採点は、ここまで徹底したシステムの下でなければその「質」を「確保」することはできない、ということではないだろうか。大臣は、大学入学共通テストの記述問題が、厳格な体制の下になされて初めてその「採点の質」が「確保」されるものであることを、図らずも明言してしまったのである。
たしかに、「適正な試験」や「必要な研修プログラム」を受けた「質の高い採点者」が「多層的な組織体制」の下で採点するのなら、問題はないのかもしれない。だが、そのような厳格なシステムにおいて初めて可能となるような採点を、個々の受験生は果たして自力でできるのだろうか。いや、現実的に考えれば、無理に決まっている。とするなら、受験生は、自己の正確な得点を判断できない状態で、最終的な志望校の決定を余儀なくされるのである。
厳格な体制によって初めて可能になるような採点を“受験生本人”に行わせるという無謀。そしてその結果、自己の点数も正確に把握できぬままに出願することを強いるという理不尽。この根本的な矛盾について、文部科学省や大学入試センターは、はたして解決策を用意できるのだろうか。