例えば、ハローワークや職業紹介事業者などの紹介で、一定期間試行的に雇用する事業主に対して助成金を支給する「トライアル雇用助成金事業」は、現行の制度としては2013年度から始まっているが、利用状況からは支援の有効性に疑問符がつく。トライアル雇用開始者の対象をみると、就業困難者として想定される「2年以内に2回以上離職または転職を繰り返している」、「離職している期間が1年超」の者は、いずれも全体の1割にも満たない(図表1)。

一方、「就労経験のない職業につくことを希望」する者が全体の9割弱を占めており、これは、単に今の職よりもよくみえる別の職に就きたい人が応募しており、就業困難者支援というよりも、むしろ就職氷河期世代も含め、既に一定レベルの職に就いている人の“転職支援”という色彩が強い印象を受ける。

また、ハローワークなどの紹介で正規雇用として雇い入れる事業主に対して、助成金を支給する「特定求職者雇用開発助成金事業」に至っては、利用が極めて低調で支援策として機能していない。制度開始の2017年度は5億3495万円の予算額に対して実際の利用はわずか27件の765万円、翌2018年度も予算を10億7860万円まで拡大したものの、利用は453件の1億2800万円にとどまっており(2018年末時点)、全体の利用額は1割にも満たない。その理由として、対象労働者の要件に「過去10年間に5回以上離職または転職を繰り返している」が定められており、これでは、就職氷河期世代向けの支援として、あまりにも対象が限定的といわざるを得ない。

こうした“支援・対策の中身のズレ”を受けて、厚生労働省は、2019年度から、前者については「ニートやフリーターなどで45歳未満」、「生活困窮者」を対象者に加え、また、後者は要件を「正規雇用労働者として雇用された期間を通算した期間が1年以下であり、過去1年間に正規雇用労働者として雇用されたことがない」に変更したうえで、いずれも事業を継続している。

一歩前進だが、依然として残るズレ

今回の新たな支援について、6月11日の第3回経済財政諮問会議の資料をみると、施策の方向性として、①相談、教育訓練から就職までの切れ目のない支援、②個々人の状況に合わせた、より丁寧な寄り添い支援、が掲げられている(図表2)。そのなかで②においては、生活困窮者相談支援機関の機能強化や、複合課題に対応するための支援の輪の拡大など、福祉面からの支援が挙げられており、就職氷河期世代の実情を踏まえれば、就労と福祉の両面から同世代をサポートしていくとする方向性が示された点は評価できる。