引き抜きのオファーには気が向かなかった
【成毛】成功したが故の悩みですよね。贅沢な悩みかもしれないけれども。とはいえ「6倍まで引き上げた名編集長」なわけですし、いろいろと引き抜きのオファーはありましたか?
【山田】「東洋経済オンライン」が注目されている間は、特にオファーをいただきました。どこかのスカウトのリストに入ってしまったのか、頻繁に「会いませんか」と言われましたね。ただ、数字がどんどん伸びていて、仕事が充実していた時期でもありましたから、気は向きませんでした。
【成毛】転職には、タイミングもありますから。
【山田】その意味で、50歳を超えて「決断」した瀬尾傑さん(講談社からスマートニュースへ転職)、大西康之さん(日経新聞社からフリーのジャーナリストとして独立)、柳瀬博一さん(日経BP社から東京工業大学教授へ転身)たちはすごいな、と。僕ももう少し若い頃なら、「決断」する気持ちもあったかもしれませんが、長くいた今の会社はやはり楽しいですし。2019年1月から『週刊東洋経済』の編集長になりましたが、また何年か経ったら、おそらく違うポジションに回ることになるはずです。それもまた面白い。会社側もタイミングを見て「次は何をやりたいのか」と聞いてきてくれるので、そういう意味では起業家的な面白さも享受できています。楽をさせてくれない、ともいえますが。
年上の人より高い給与をもらっている若手がいる
【成毛】それって極論すると「いい会社」ということなんですよね。
【山田】会社の形態が関係しているかもしれません。東洋経済新報社は、社員が株を持っているような会社で大株主がいません。だから無理難題が上から降ってくることもない。これが上に株主がいたり、どこかの子会社だったりすると、ステークホルダーの論理によって、変な力が働くことはどうしてもあると思います。
【成毛】給料はどうですか? 編集長手当みたいなのは手厚い?
【山田】役職ごとに手当が付きます。月5万円とか、3万円とか。大手出版社でも驚くほど付かない企業もあるそうですから、これも恵まれているのでしょうね。局長に就任したら手当が数千円付いたけれど、赤字部門だから、就任した途端に「賃金30%カット」とかいった話も聞いたりしますし。
【成毛】給料は年功序列?
【山田】昔は完全に年功序列でしたが、今は評価で差が付くようになっています。だから若くても、年齢が上の人の給与を超える、という場合もあります。以前から評価給という名目でしたが、年齢が一つ下の人が最高評価になっても、一つ上の年齢で、最低評価をとった人を超えることはありませんでした。それが今は、超える可能性もある。だから、若くしていい額をもらっている人もいます。