第3に、適切な外国人受入れを推進していくための、入国管理・雇用管理・生活支援の全般にわたる一貫したトータルな体制整備である。今回の法改正では出入国在留管理庁が創設され、これらその役割を担うが、管理を担ってきた入管当局を母体とするが支援を同時にできるのかという疑問がある。企業に適正な雇用管理を指導・監督する体制への不安もある。十分な予算措置を行ったうえで、監督・指導体制のリソース充実とさまざまな主体との連携・協業体制の構築が不可欠である。
とりわけ、いわゆる共生政策が重要になるが、その具体化はこれからといった段階である。国・地方・企業の分業・連携体制の整備、情報共通・横展開の仕組み整備を進めていくことが重要である。現実にはその整備は一定の時間がかかるし、共生の主役である外国人および地域住民が、頭ではなく実感として相互を理解するにはそれなりの試行錯誤が要る。そうした意味でも、外国人全体の受入れペースを適切に制御することが重要になるといえよう。
安価な外国人材も早晩枯渇することになる
以上、政府や自治体の課題についてみたが、働くために日本にやってくる外国人が、その生活時間の多くを過ごすのは企業(職場)においてであり、そうした意味ではまずもって企業の受入れの在り方が重要である。ここで出発点となるのが、受入れる外国人を「人」として見るという、当たり前のことである。しかし、残念ながら、そうした当たり前のことが必ずしもできていないのは、技能実習制度の法律違反が多くみられ、留学制度の悪用が散見されることに表れている。
そうした安易な考え方のままでは、90年代以降コスト削減を至上命題として非正規労働者の割合を高め、安上がりのビジネスモデルを構築し、短期的には良いようにみえても、長期的には苦しい状況に追い込まれている、日本企業の在り方に根差す面がある。
いま求められているのは、安価な労働力としての外国人を受入れることで、薄利多売の時代遅れのビジネスモデルを生き長らえさせることではない。
すでに安価な国内人材がほぼ枯渇しつつあるように、安価な外国人材も早晩枯渇することになる。アジアの経済成長が続く中で、安価な労働力としての位置づけでは、急速にアジアの人々が日本に来てくれなくなっていく。アジアの賃金の上昇で相対的な魅力が薄れると同時に、韓国・台湾・タイといったアジアのなかでの高所得国の魅力が高まり、これらの国々との人材獲得競争が激化していくからである。
ここで銘記すべきは、外国人材活用の真の意義はコスト削減ではなく、海外向け事業の拡大にこそあるということだ。
日本人人口の持続的減少で国内市場への縮小圧力がかかり続けるなか、企業が持続的な成長を実現するには、非製造業を含めて業種を問わず、輸出・インバウンド・海外現地事業など、何らかの形で海外市場を開拓していくことが不可欠になっていく。そのためには、海外現地事情を肌で知る現地出身の外国人の知見を取り入れることが成功のカギとなる。それは、コスト削減のための安価な労働力ではなく、事業拡大のための有能な人材として、外国人を捉えるべきことを意味している。
そのためには具体的には、以下の5点に取組むことが必要である(※4)
(※4)グレーター・ナゴヤ・イニシアティブ協議会「国際的な人材活用~外国人労働者受入ガイドブック~」が参考になる。