シンガポールでは、部下が上司に依頼された仕事を断わったり、条件のいい職場が他にあれば転職するのが当たり前。お客様から頼まれたことを断る店員も普通なのだそう。仕事に完璧を求めるより、そのほうがはるかに効率が良い理由とは――。
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日本もダイバーシティを学びたい

ファイナンシャル・プランナーの花輪陽子です。シンガポールで生活をしていると働く人も生き生きとしていると感じます。日本人の多くからも東京で働いている時よりも時間にゆとりが持てるという意見も聞きます。筆者は日本の米系企業で8年間働いた経験がありますが、やりとりしていた海外の企業、とくに日本よりも社員がゆとりを持って働いているにもかかわらずシンガポールや香港のスタッフは仕事をしっかりとやってくれる印象を持っています。これはなぜでしょうか。

世界各国からさまざまな人たちが集まるシンガポール。人種、言語、宗教など異なる背景の人たちが働いています。金曜日のランチ時間を延長してお祈りに行くというスタッフもいれば、有給の後に病欠をよく取るスタッフも。働き方に対する考え方もさまざまで「こうあるべき」といったことは通用しません。

日本ではアルバイトでも厳しい規則が課されることもありますが、海外ではその仕事をするのに十分な給料が与えられていない場合は上司に依頼された仕事でも断る社員がいます。メールを1通送るという簡単な仕事でも業務の範囲外といった形で断られることもあるそうです。サービス残業などはそれなりのポジションでなければあまり考えられないのです。雇用主の言いなりにならず、条件がよい職場が他に見つかればすぐ転職するのは当たり前の文化です。

このようにさまざまな背景のスタッフが集まると組織がめちゃくちゃになってしまいそうですが、全体としては仕事がしっかりと回っているのです。その理由の一つとして、ある程度以上のポジションの人たちが非常に優秀で、日本人以上にしっかりと働くということも挙げられます。これは日本の外資系にも見られる文化ですが、それなりの待遇を与えられているので喜んでつらい仕事も引き受けるのです。管理職以上のポジションで怠けていたり、収入に見合った結果が出せないと会社を去ることになります。その代わり、管理職と待遇がかけはなれた一般のスタッフはワークライフバランスを優先させることができるのです。日本で昔あったように後輩が先輩の下仕事を全部するといった理不尽なことはあまりなく、働かない管理職もあまり見かけません。自分で選んで収入に見合った働き方をするので、フェアと言えばフェアな社会かもしれません。