お客様が神様でゴネればなんとかなるのは日本だけ

もう一つシンガポールで生活をしていて感じることに、ウェイターなどの従業員も顧客と対等で、平気で頼んだことを断ってきたり、簡単には謝らないという文化があります。

例えば、タクシーを捕まえようと思っても、運転手が行きたい方向と違う場合は断られることもよくあるのです。タクシースタンドで待っているのに何台も断られたということもあります(行き先は街中の比較的便利な場所にもかかわらず)。

また、日本のように朝礼をして全員で情報共有を徹底するといった企業はほとんどありません。聞く人によって言っていることが違うというのはよくあることです。できると言われてできない(逆に、できないと言われてできる)などといった事態もよくあることです。そのことに対して文句を言っても簡単に謝ったりもしません。ゴネてもできないことはできないとハッキリ言って断ります。

こういった文化を働いている分には楽でよいかもしれませんが、消費者としてはたまらないと感じる人も多いかもしれません。対応策としては、私もこちらにきてからよくやりますが、クレームへの対処などで納得ができないと簡単には引き下がらないことです。高級ホテルのレストランでいくつもの向こう側のミスが重なって、メンバーディスカウントを受けることができませんでした。どうしても納得ができなかったので論理的に説明をしたら特別に対応をしてもらえました。

こうしたことは格安サービスではなくてもよく起きます。もともとが格安サービスの場合は、向こうの都合でキャンセルをしてきた場合も払い戻されないことも多いですが、ある程度以上の規模のフランチャイズや高級店の場合は自己主張すれば対応をしてもらえる場合が多いです。安心料も含めて顧客は高めの値段を支払っているので交渉をしてみるべきでしょう。その場合も感情的、攻撃的にならずに淡々と正論を言って交渉をする必要があります。

逆に日本と違って白黒ハッキリではなく、交渉次第で融通が利くなどグレーを許容する部分もあるので、私は日本にいるよりも労働者としても消費者としてもいろいろと楽になりました。

お客様は神様(よいサービスをより安く)という概念が強すぎると、企業側や従業員がつらくなってしまいます。海外を見習って値段をサービスに対して適正にしたり、顧客の理不尽なゴネに対しては戦うなどの合理性が日本社会にも必要な時代なのかもしれません。

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