企業がダイバーシティ&インクルージョン(D&I)を経営課題として掲げる時代になってきた。そこで、企業で働く男女800人を対象に、男女別・年代別に加え、業界別でD&Iの進み具合を調査。本当の意味で、D&Iが浸透しているのはどの業界だろうか?

女性が多い食品・飲食業界は意外にも「昭和トップ」

今、多くの日本企業は経営陣が旗振り役になり、各種制度の充実や高い目標を掲げながら、D&Iに真剣に取り組む姿勢を見せている。しかし、海外と比べて女性リーダー比率は極めて低いままなのが現状だ。

働く女性を取り巻く環境に詳しいジャーナリスト、白河桃子さんは「いくら経営トップが積極的な姿勢を見せていても、現場に浸透していなければ、真にD&Iが進んでいるとは言えません」と指摘する。

今回の調査では、そんな企業の本音と建前が浮き彫りになった。

制度は整っていてもその内実は?

まず、勤務先の経営層がD&Iを経営戦略の重要課題と位置づけ積極的に推進しているか、経営上の意思決定において、多様な人材の知識や意見が取り入れられているかを尋ねた設問(Q1、Q2)で、「とてもそう思う」「ややそう思う」の割合が高かった業界は、金融・保険、IT、電気・精密機器、自動車・機械、商社だった。逆に割合が少ない、いわばトップが昭和のままの業界は、運輸・物流、建設・不動産、食品・飲食、サービス・コンサルだった。

運輸・物流と建設・不動産は、男性中心のイメージが強いが、食品・飲食は、一般に女性社員の割合が高い業界。意外な結果と思われるが、「女性に人気のBtoC企業は意外にD&Iへの取り組みが遅れています。この業界の主要企業に老舗のオーナー企業が多いこともその一因でしょう」(白河さん)。

Q1とQ2については、女性のほうが「そう思わない」と考える割合が高く、自社の経営陣に対して男性よりも厳しい見方をしていることがうかがえる。一方で、Q3とQ4の公平な人事評価と、属性に関係ないキャリアチャレンジについては、それほど大きな男女差は見られなかった。

多様性を認めるための表面上の評価や制度は男性から見ても女性から見ても、そこそこ整ってきているのが日本の現状ということだろう。

属性にとらわれない公平な人事評価が行われている?