全体統括組織として「出入国在留管理庁」を創設

今回の入管法改正と同時に、「外国人材の受入れ・共生のための総合的対応策」が策定されている。従来、地方自治体任せであった共生政策について、国として取り組む姿勢を示した形である。

主な具体的施策としては、①約100カ所の「多文化共生総合相談ワンストップセンター(仮称)」を設置、②行政サービスの多言語化の推進(災害情報、110、119番通報の通訳対応)、③日本語教育の充実(日本語教師の新資格創設、日本語学校の質向上策)などが挙げられている。

加えて、外国人材受入れの全体統括組織として、「出入国在留管理庁」が創設された。企業からの、外国人への給与支払い状況、転職、生活支援の実施状況などの定期的な届け出を審査し、指導や改善命令を出すほか、共生政策の体制整備を推進する役割も担い、必要に応じて改善策を取るとされている。

外国人材受入れ拡大に「歓迎」は3割にとどまる

では、これらの施策をどう評価すべきか。われわれの行ったアンケート調査では、今回の新在留資格の創設による外国人材受入れ拡大についての評価を企業に聞いている。それによれば、「事実上の移民政策であり、反対だ」という明確な否定的意見は1割に満たないが、その一方で、「歓迎する」との回答も約3割にとどまる。

「長期的な定住を基本とすべき」(28.5%)「国内労働力増加の施策を優先すべき」(28.0%)、「既存制度の不備を正すべき」(27.4%)、「外国人の生活支援策を国として確り進めるべき」(26.1%)、「適用対象をもっと広く拡充すべき」(23.9%)といった、一層の改善を求める声が多い。企業の受けとめとしては、総じて外国人材の受入れ拡大には賛成であるが、その受入れのための整備や環境の整備は不十分であり、一層の改善が必要だとの認識を持っていると言えよう。

筆者としても、今回の法改正は、従来の実習生や留学生という名目で実質的な労働者を受入れ、さまざまな問題を生じさせてきたことからすれば大きな前進であるが、それはあくまで改革の第一歩にすぎない、との考えである。言い換えれば、今後さまざまに制度を見直していくことが不可欠だということで、私見では以下の3つの見直しが必要である。