この4月の入管法改正により、外国人労働者の一段の増加が予想されている。日本総研の山田久主席研究員は、「われわれの試算では2030年には全労働者の5~6%に達する。だが居住地の偏りなど、すでに起きている問題への手当ても遅れている。少なくとも制度上は3つの見直しが必要だ」と指摘する――。
国際機関から「人身売買」とまで指摘された技能実習制度も改善されるか(写真は人身売買とは関係ありません。写真=iStock.com/JGalione)

悪質なブローカーは本当に排除できるのか

今年4月の入管法改正もあり、外国人労働者受入れへの関心が高まるなか、筆者が属する日本総研は、全国約1万社を対象に「人手不足と外国人材活用に関するアンケート調査」を実施した。その結果は日本総研のホームページに掲載されている(※1)が、本稿ではその調査結果を踏まえつつ、今般の改正入管法の評価を行ったうえで、望ましい外国人材受入れの在り方を考えてみた。

(※1)「人手不足と外国人採用に関するアンケート調査」結果を参照。外国人雇用比率の高い産業を中心に、上場企業1559社、非上場企業8429社を対象にアンケート票を郵送、1039社から回答を得た(回収率10.4%)。回答企業のうち外国人採用企業の割合は43.2%。調査期間は2019年1月下旬から2月上旬。

まず、前提として、今回の改正入管法のポイントを確認しておこう。新たに創設された在留資格「特定技能」とは、従来から受入れてきた「専門的・技術的分野」以外で、人手不足の緩和のために労働力として正面から受け入れるものである(※2)。より具体的には、特定産業分野に属する、相当程度の知識または経験を必要とする技能を要する業務に従事する「特定技能1号」、および、特定産業分野に属する熟練した技能を要する業務に従事できる「特定技能2号」が新たに設けられた。

(※2)政府の説明では、「特定技能」は「専門的・技術的分野」の範囲内との位置づけであり、従来認めてきた就労可能な在留資格よりやや技能の熟練レベルが劣るカテゴリーを、「専門的・技術的分野」のなかに設けたとしている。

ここで「特定産業分野」とは、生産性向上や国内人材確保のための取り組みを行ってもなお、人材を確保することが困難な状況にあるため、外国人により不足する人材の確保を図るべき産業上の分野、と定義されている。具体的には、特定技能1号については、介護、ビルクリーニング、素形材産業、産業機械製造業、電気・電子情報関連産業、建設、造船・船用工業、自動車整備、航空、宿泊、農業、行業、飲食料品製造業、外食業の14分野、特定技能2号については、建設、造船・船用工業の2分野が指定されている。

また、生産性向上や国内人材確保のための取組と矛盾しないという原則を確保するため、分野別の基本方針と向こう5年の受入れ見込み数(最大34万5000人)が提示されている。このほか、二国間取決めなどによる悪質なブローカーの排除がうたわれ、受入れ機関(受入れ企業)および登録支援機関(企業への支援機関)が外国人への支援計画を作成することが義務付けられている。

在留資格の取得経路としては、基本的に「技能実習」からの移行が想定されているが、技能実習制度が存在しない「宿泊」「外食」、あるいは技能実習制度の歴史が浅い「介護」については、「技能評価試験」「日本語能力試験」の両方をパスすることが、特定技能1号を取得する条件とされている。