外国人技能実習制度の廃止が、日本の食に深刻な影響を与える恐れがある。ジャーナリストの山口亮子さんは「日本の農業は生産性の低い小規模農家が多く、技能実習生のような安価な労働力がなければ成り立たない品目もある。レタスや牛乳などの農産物がスーパーなどで安価に買える時代はもう終わりかもしれない」という――。
レタスの最大の産地は外国人なしに成り立たない
「レタスの生産量は日本一ですが、みなさんの力を借りなければ、農家さんも経営が成り立ちません」
自らのホームページで外国人にこう呼びかけるのは、レタスの出荷量が全国トップの長野県川上村。標高1000メートルを超え冷涼な気候であることから、レタスや白菜といった葉物野菜の生産が盛んだ。
収穫をはじめ、作業には多くの人手を要する。しかし「重労働で、日本人のアルバイトには敬遠される状況にある」と村役場産業建設課長の原恭司さんは嘆く。そこで貴重な労働力となっているのが、外国人だ。コロナ禍前は住民の2割を占めるまでになり、新宿区よりも外国人の割合が高い村として紹介されてきた。
「農家戸数は400戸余り。農業に従事する外国人は例年およそ1000人なので、農家1戸当たり2、3人の計算です」(原さん)
コロナ禍で外国人の割合は20→5%台に
コロナ禍では、水際対策強化により外国人が入国できない時期が続き、村の労働力確保は厳しい状況に置かれた。村内の外国人の割合は2021年末には5.7%まで下がった。この間、大阪のブローカーが不法就労のベトナム人を事情を知らない村内農家の元に多数送り込み、職業安定法違反で有罪となる事件も起きている。
今はコロナ禍で入国が制限されていた反動で、東京の入管での入国審査が滞って多くの外国人が入国できておらず、依然として十分な働き手を確保できていない。
目の前の人手不足に悩む一方で、新たな不安も生まれている。それが、「技能実習制度の廃止」だ。