一体、どれだけの費用と時間を無駄にするつもりなのか
まぁ、実態はこんなものなのである。提案側の25人のなかで確実にしゃべる必要があるのは、各部署の責任者である4、5人だけであり、他の約20人はその場にいなくてもプレゼン自体に何の支障もない。むしろクライアントからすれば、「こんなに大勢のスタッフがいるなんて、どれだけ人件費を請求されるのだろう……」と不安になったことだろう。加えて、いなくてもいい人間が往復の移動時間とプレゼンの1時間──合計2時間ほど拘束された状況なので、さまざまな業務が滞り、結果として無駄な残業時間が発生したことと思われる。
また、フリーのライターになってからも同じような状況には何度も遭遇した。広告案件のライティング業務で取材が発生する場合、現場が無駄に大人数になるのだ。
基本的に取材現場でフル稼働するのは、ライターとカメラマンの2名である。究極的には、この2人さえいれば取材は進められる。その他、クライアント企業の担当者は、扱う商品の専門知識があるだけにいたほうがいいだろう。広告会社の人間も1人くらいはフォロー役として立ち会うことに異論はない。しかし、なぜか広告会社の人間が3~4人もいたりすることがあるのだ。さらには、その広告会社本体の人間に加えて、制作を担当する子会社のスタッフが1~2人ほど付いてきたりもする。
地方での取材となれば、これで1泊2日の出張をし、夜はクライアントの接待も兼ねた食事の席を設けたりするのだから、交通費・宿泊費も含めて一体どれだけカネがかかってるんだ、と思う。何度も言うが、実際には彼らの大半が現場にいなくても取材自体は問題なく進むのだ。そりゃ、予算に余裕があるならいても結構だが、他にやるべき業務はないのか。いくらでも「働き方改革」を実践する余地があるだろう。というか、余計なカネを使うのなら、ギャラをもっと上げてくれ!
コスト意識の欠如が「いなくてもいい人」を生む
こうした経験を経た末に私が得た教訓は「いる必要のない人は、その場にいなくてもいい」ということだ。そして、それを達成するために重要なのが、コスト意識を持つことである。もっとも言ってしまうなら、予算に余裕がなければ自然と無駄なことはしなくなる。
人が稼働すれば、本来はその分のお金がかかるものだ。会社員時代に携わった案件には、おそらく予算が潤沢にあったのだろう。勤めていた会社も当時は非上場だったせいか、「ま、黒字になっていればそれでOK」みたいな雰囲気が強かったように思う。だから、残業が多いことや、本当は立ち会う必要がない場所に社員が出向くことも自然な行為とされていた。しかし、私がフリーランスになってからは、余計な人員を打ち合わせや取材に連れていくことが金銭面で無理になった。