「すべて頑張った女性が一人前」のプレッシャーが強すぎる
就職して社会に出ると、自分のこだわりを貫くことは難しくなる。さまざまな場面で、世の中の「常識」や「規範」とぶつかるからだ。
「他者に期待されるイメージに自分自身を近づけていく。勝手なことを言ってダラダラ生きていてはいけない、と教え込まれるんですよね。そうすると結果として、外に見せている自分と、本当の自分との間にギャップが生じる。それがどんどん大きくなっていく。つい頑張り過ぎて、そんな悩みを抱える20~30代は多いのではないでしょうか」
女性では特に「やることリスト」を求められる局面が多い、とも指摘する。
「仕事をして、結婚をして、子育てもして、美容にも気を配って――。すべて完璧に頑張った女性が一人前、というプレッシャーがこの社会では強すぎると思うんですよ。書店の棚を見回しても、あれをしよう、これをしよう、というタイトルが多くて、女性に向けて『やりたくないことは、そこまで全力でやらなくたって、死にゃあしないよ!』と言ってくれる本って少なくないですか? それなら、私がその旗を振ろうと思いました」
「やめる」を勧める本書には、そんな自分より下の世代に向けたメッセージが込められている。
いついかなる時も「お酌」は必要なのか
その事例のひとつが飲み会の「お酌」だ。会話に夢中になっていたら、相手のグラスが空いているのに気付かず、横から上司ににらまれる。そんな経験のある人は多いのではないか。
岡田さんにお酌をやめるきっかけを与えたのは、雑誌編集部での上司だった当時40代の女性編集長だ。
社内の新入部員歓迎会の冒頭。彼女は全員に飲み物が行き渡ったことを確認すると、乾杯の音頭の代わりに「あとは、手酌で!」と宣言した。
「私もよく訓練された若手の例に漏れず、飲み会ではお酌をされたら必ず受けて、飲み干して返杯しなければならない、という教えが体に染みついていました。でもその女性上司は、内輪の飲み会ならお酌は仕事じゃない、だから自分のペースで楽しもう、と呼びかけた。毅然とした姿勢がかっこよかったですね。私も真似するようになりました」