ニューヨークに「新橋」を持ち込む日本の会社員
常識や規範とされているものをアップデートする作業は、ややこしい。規則なら一度に変えられるが、空気の読み合いから生まれる「暗黙の了解」は、自然と受け継がれてしまうからだ。
岡田さんが住むニューヨークには「お酌」の文化はないが、「日本企業から赴任してきたサラリーマンと会食をすると、おなじみのやり取りが始まって一気に空気が『新橋の居酒屋』になることがある」と笑う。
「お酌に限らず、いわゆる接待っぽいことをされそうになったら、ここはニューヨークなんで~! と冗談交じりに断っています(笑)。国境を越えても変わらないほどの慣習なんですね。例えばこれを、20代の若手がいきなり断ち切るのは簡単ではありません。40歳を前に、どちらかというとお酌『される』立場になったからこそ、率先して、上からルールを書き換えられるんです。先輩たちを見て、これはいいなと感じた『やめる』のバトンを、受け取って次代につないでいきたいですね」
「何もしない自由」を取り戻すヒント
本書には、「お酌」を含め計39項目の「やめたこと・やめること」リストが紹介されている。
SNSの発達で情報が増え、他人の動きや考えは以前より見えやすくなった。放っておけば、「やるべきことリスト」は無限に増える。そしてそれをこなそうとすれば、「考えるよりも行動すること」を強いられる。
「やめること」を意識するという本書のメッセージは、そんな状況から距離を取って「考える自分を取り戻そう」という提言にもなっている。
「本書にリストアップされた『やめる』の数々は、あくまで一例。『正解』が書いてあるわけではないし、人によって何をやめるか、どのようにやめるかは異なるでしょう。40代という一つの山をきっかけに、『しない自由』を取り戻す。そのためのヒントとして活用してほしいと思います」
岡田 育(おかだ・いく)
文筆家
1980年東京都生まれ。出版社勤務を経てエッセイの執筆を始める。著書に『ハジの多い人生』(新書館)、『嫁へ行くつもりじゃなかった』(大和書房)、『天国飯と地獄耳』(キノブックス)、二村ヒトシ・金田淳子との共著『オトコのカラダはキモチいい』(角川文庫)。2015年より米国ニューヨーク在住。
文筆家
1980年東京都生まれ。出版社勤務を経てエッセイの執筆を始める。著書に『ハジの多い人生』(新書館)、『嫁へ行くつもりじゃなかった』(大和書房)、『天国飯と地獄耳』(キノブックス)、二村ヒトシ・金田淳子との共著『オトコのカラダはキモチいい』(角川文庫)。2015年より米国ニューヨーク在住。
(聞き手・構成=加藤藍子 撮影=プレジデントオンライン編集部)