すべては「期待値のコントロール」からはじまる

経営学者のピーター・F・ドラッカーは、「コミュニケーションの4原則」のひとつに、「期待」を挙げています。

コミュニケーションは知覚である
コミュニケーションは期待である
コミュニケーションは要求である
コミュニケーションは情報ではない

期待がコミュニケーションの源泉なら、その“はじまり”である自己紹介においても、「期待を生み出せるか」どうかが明暗を分けると言えます。

ただし、期待値はひたすら上昇させればよいというわけではありません。相手の期待を上げすぎて、結果で応えられなければ本末転倒です。図表1にあるとおり、「実際の品質」と「事前の期待値」の差分によって、相手の満足度は変わってきます。

自己紹介で事前の期待値を必要以上に上げず、正当な評価を引き出します。期待値を上手にコントロールできれば“ボタンの掛け違い”がなくなり、自分と相手との正しい信頼を築くことができるのです。

人間関係の構築は農業と似ている

人間関係の構築は、農業にたとえることができます。

作物を収穫するにはまず、土を耕し、種をまかなければ始まりません。仕事においてもまずはやはり、協業する相手、取引する相手との関係を築くための「土台づくり」が出発点になります。いわば自己紹介とは、「土を耕す」「種をまく」行為に似ています。土壌が良いほど、作物はよく育ち、良い果実が収穫できるわけですから、「最高の自己紹介」ができれば、「最高の成果」につながる可能性も高くなります。

その「期待のマネジメント」をするためのロードマップとして役立つのが「AIMASモデル」です。「ア(会)イマス」と読みます。これは、基本的な自己紹介のフェイズを5つに区切ったものです。

まず、初対面の人に「自分は誰なのか」と伝えるのは、「Attention(注意関心)」と「Interest(共感)」の部分にあたります。そして、その先にある「Seeding(種まき)」で、相手と話し合いに入って初めて種をまくことができます。

特に始めの「1 Attention」「2 Interest」でつまずいたり、苦手意識を感じている人は少なくないでしょう。そこで、うまくいくための実例を交えながらお話ししていこうと思います。