※本稿は、横石崇『たった1分で仕事も人生も変える 自己紹介2.0』(KADOKAWA)の一部を再編集したものです。
「信用」と「信頼」の違い
まずは、自己紹介の目的についての捉え直しからスタートしましょう。
「自分は何者か」を伝えるとき、会社名や部署名、名前を伝えて相手の記憶に残せばいいと思っていないでしょうか。
実はこの、「いかに覚えてもらうか」という目的そのものに落とし穴があります。覚えてもらうことも良い印象を残すことも「目的」ではなく、あくまでも「手段」に過ぎません。
自己紹介における最大のミッションは「良好な信頼関係を築き上げること」です。
初めて会う人と挨拶を交わし、短い時間の中でお互いに信頼を築くことで、次のステップへ向かうことができます。
ではそもそも「信頼」とは何でしょうか。「信用」と混同されやすいので、その違いについても前提を確認しておきましょう。ここでは普段の仕事から、「信用」や「信頼」について思考を巡らせている、予防医学研究者で医学博士の石川善樹さんによる定義を紹介します。
・信用=相手に対する「理性的」な判断
・信頼=相手との「感情的」な結びつき
脳科学も研究する石川さんは、相手と自分の間に流れる目に見えないつながりを、理性と感情で区別することで、本質を見出しています。つまり、「信用」は物理的な評価や判断ができるのに対して、「信頼」は右脳的で感覚的な曖昧さを含んだ関わり合いであることが分かります。
名刺交換と自己紹介を混同しない
また、「名刺交換」と「自己紹介」をしっかり区別すると、コミュニケーションの精度がさらに上がります。
名刺交換は信用のやりとりに重きが置かれます。お互いの所属先や連絡先をはじめとした情報を明かすことで、会社の規模やブランド力など、世の中の尺度に合わせて総合的に判断します。
一方、自己紹介は、眼の前にいる本人が信頼に値するのか感覚的に判断します。「この人にまかせても大丈夫だろうか」「私にどんな興味があるのだろうか」など、第一印象や話し方、声質など五感をフル活用して、自分の尺度で評価をしていきます。
・名刺交換=信用の確認
・自己紹介=信頼の創造
自己紹介は信頼を生み出してくれます。自己紹介とは創造的な行為であり、他者との共同作業であり、未来へ向けた対話なのです。