窮地に立たされている創業家出身の潮田CEO
住宅設備大手のLIXILグループ(以下リクシル)の経営権を巡る争いが佳境を迎えている。
会長兼CEO(最高経営責任者)で創業家出身の潮田洋一郎氏と、潮田氏に事実上解任された前CEOの瀬戸欣哉氏が経営権を巡って、株主の委任状争奪戦、いわゆるプロキシーファイトを6月下旬の株主総会に向けて繰り広げることになりそうだ。
近く、リクシルの指名委員会が「会社側」の取締役候補を決定する。リクシルは指名委員会等設置会社で、社外取締役が主体となって設けられている「指名委員会」が候補者を決める仕組み。一方で、瀬戸氏側も、取締役候補8人を選ぶ「株主提案」を提出している。株主総会でどちらが多数を得るかが焦点になる。
こうしたプロキシーファイトに発展した場合、通常は「会社側提案」が有利になるケースが多い。金融機関など日本の大株主が会社側提案を支持する傾向が強かったためだ。
ところが、今回の場合、潮田氏は窮地に立たされている。
事の発端は、昨年10月末、社長兼CEOだった瀬戸氏の退任が発表され、それまで取締役会議長だった潮田氏が、会長兼CEOに就任、社長には社外取締役の山梨広一氏が就くことになった事だった。前述のようにリクシルは指名委員会設置会社で、潮田氏と山梨氏はそのメンバーだった。
「不透明」なCEO交代を機関投資家が疑問視
瀬戸氏の解任を決めた指名委員会では、潮田氏は「瀬戸氏から辞意を伝えられた」と説明、一方の瀬戸氏は、「(解任は)指名委員全員の総意であると説明された」と自らの意思ではないことを強調している。
そうした「不透明」なCEO交代について、欧米の機関投資家から疑問の声が上がった。世界最大の資産運用会社米ブラックロックや英投資会社マラソン・アセット・マネジメントなどがリクシルの取締役会に対してコーポレートガバナンス(企業統治)のあり方を厳しく問う書簡を送っていたことが、2月になってメディアの報道で明らかになったのだ。
リクシル側はCEO交代の経緯を調べた弁護士による「調査報告書」の概要を2月25日に公表、3月7日には一部の機関投資家向けに説明会を開いた。会社側は交代の手続きに法的な不備はないことを示そうとしたわけだが、逆に、火に油を注ぐ結果になった。指名委員会のメンバーだった潮田氏と山梨氏が自ら会長、社長に就いたことがガバナンス上、重大問題だとする声が強かった。
しびれを切らしたマラソン・アセットなど機関投資家4社は3月20日に共同で「臨時株主総会の招集請求を行った」と発表。潮田氏と山梨氏の取締役解任を議題とするとした。これにはリクシル統合前のINAXの創業家の伊奈啓一郎氏も賛同、共同提案者に名前を連ねた。