追い詰められた潮田氏らが選んだ「奇策」

当初、リクシル側は5月中下旬に臨時株主総会を開催するとしていたが、追い詰められた潮田氏らは「奇策」に出る。

4月18日、5月20日の取締役会で取締役を辞任すると発表したのだ。通常ならば、6月の定時株主総会をもって退任すると発表するものをわざわざ5月にしたのだ。5月中旬で辞任してしまえば、取締役解任を求める臨時株主総会を開催する意味がなくなるからだとみられる。臨時株主総会で仮に取締役を解任されれば、潮田氏はリクシルの経営に関与することが今後一切できなくなる可能性もある。

さらに取締役の辞任発表のリリースにはご丁寧にもこんな一文があった。

「なお、両名からは、現時点で、潮田氏においては代表執行役会長兼CEO、山梨氏においては代表執行役社長兼COOの各役職を辞任又は退任する意向は示されておりません」

取締役は辞めるがCEOは辞めないと読める発表文に、記者からの質問が相次いだ。会見した潮田氏は会長兼CEOも辞任する意向を示したが、期日は6月末の株主総会ということになっている。

業績悪化の責任は「瀬戸氏にある」と攻撃

退任会見では同時に、業績修正も発表した。45億円の黒字予想だった2019年3月期の業績見込みを大幅に下方修正、イタリア子会社での損失計上で530億円の最終赤字に転落するとし、これらの業績悪化の責任が「瀬戸氏にある」と攻撃してみせたのだ。しかも、自身が辞める理由を「瀬戸氏をCEOに任命したこと」とした。

どうやら潮田氏は完全に引退する気はさらさらないのだろう。会見でも、要請があれば引き続き経営に関与する考えも示唆している。

問題は、近く公表される「会社側」の取締役候補者の提案がどんなものになるかだ。潮田氏の影響力が残るのか、それとも瀬戸氏や機関投資家が納得する人物が候補として挙がってくるのか。

現在の指名委員会は社外4人と社内1人の5人の取締役で構成される。委員長はバーバラ・ジャッジ氏で、英国の経営者協会で会長を務めるなど英米で要職を歴任し、2015年にリクシルの社外取締役になった女性だ。

さらに元警察庁長官の吉村博人氏、作家の幸田真音氏、公認会計士でリクシルの監査委員会委員長の川口勉氏が社外取締役だ。社内取締役の指名委員は菊地義信氏。LIXILグループの母体企業の一つでトステム出身者だ。トステムは潮田氏が創業家である。