シアーズの経営悪化が廃墟モール増加に拍車をかけた

しかし、その後、米国ではディスカウントストアやネットショッピングが支持されるようになった。シアーズはこの変化に店舗の強化で対応しようとしたが、かなわなかった。同社には、カタログ通販とECを融合させる発想もなかった。

2018年10月、シアーズは連邦破産法第11条(通称、チャプター・イレブン、わが国の民事再生法に相当する法律)を申請した。2019年1月には再建の難航から事業清算の危機に瀕した。現時点でシアーズはファンドの傘下に入り、4万5000人の雇用は維持されているが、経営再建のめどはたっていない。

日本には米国の教訓を活かすだけの時間がある

日本でもアマゾン・エフェクトはさまざまな企業に影響を与えている。だが日米の経済状況はかなり異なる。

まず、米国とは国土面積が圧倒的に違う。わが国では大規模なモールを建設する場所は限られる。加えて、EC業者の存在感も違う。米国ではアマゾンが生鮮食品ビジネスや無人店舗を運営しているが、わが国ではそこまでECは浸透していないといえる。

ただ、長い目で見ると、わが国の小売業界にもリアルからネットへの変化が押し寄せるだろう。変化に適応するために、わが国のモール運営企業などは、米小売企業の教訓を生かすべきだ。それは、過去の成功体験に浸るのではなく、新しい取り組みを進めるべきということだ。

国内でも多くのIT企業が成長し、ECやC2Cのマッチングサービスを提供している。それにあらがおうとするのではなく、使える要素は積極的に使えばよい。その発想が、わが国の小売企業の持続的な成長を支えるだろう。