空き店舗がアマゾンの配送センターに様変わり

わが国では、ヤマト運輸がアマゾンの求める物流サービスの基準(当日配達など)を満たすことができなくなった。それを受けてアマゾンは、自社で物流ネットワークを構築した。これは、わが国の物流における大きな変革といえる。街中にあった空き店舗が、アマゾンの配送センターに様変わりしつつあるのだ。

さらに踏み込んで考えると、アマゾンは物流革命を通して、人々がより快適に生活する環境づくりを目指している。そのために、EC、金融、物流、クラウドコンピューティングサービス、家庭版のIoT(モノのインターネット化)デバイスであるスマートスピーカーなど、自社のエコシステムを急速に拡大させている。

家に居ながらにして必要なモノが手に入ることは実に便利だ。日常の生活を見ても、食品から家電、書籍に至るまで、思いつくものはアマゾンで入手できてしまう。逆に言えば、米国のショッピング・モールや、そこに入る小売企業などは、アマゾンに対抗できるだけの魅力、優位性を顧客に提供できなかった。

物流・小売業界の「王」だったシアーズの経営悪化

その結果、多くのショッピング・モールからテナントが去っている。2018年10~12月期、米国のショッピング・モールの空室率は9%に達した。米国不動産の専門家は「ゴースト・モール(テナントが去り、廃墟と化したショッピング・モール)は増加する恐れがある」と先行きを悲観している。

空室率が大きく上昇した一因として、米小売り大手企業「シアーズ」の経営悪化がある。かつて、シアーズは米国の物流・小売業界の革命児であり、“王”だった。

19世紀終盤、シアーズは物流網が未整備だった農村部の需要に着目し、カタログ通販を開始した。農作業の道具や衣類、娯楽品までを取りそろえたシアーズのカタログ通販を利用することで、米国の農村生活は激変した。

20世紀に入り、自動車が普及し始めると、シアーズはチェーン店舗の運営を開始。1970年代には全米最大の小売業者の地位を手に入れた。シアーズは人々に、買い物の楽しさと品質への保証という安心感を提供し、支持を得たのである。