消費の場がリアルからネットへ急速にシフト
米国で「デッド・モール(廃墟モール)」が急増している。
クレディ・スイスによると、米国には約11万6000のショッピング・モールがあるが、2017年には8640のモールが閉鎖に追い込まれたという。さらに2022年までに25%のモールが消えると予想している。背景には、アマゾンなど、EC(電子商取引)プラットフォーマーの成長がある。消費の場がリアルからネットへ急速にシフトしているのだ。
ショッピング・モールとは、駐車場を構え、一つの施設として管理される商業・サービス施設の集合体と定義される。ただ、日米のモールの運営形態はかなり異なる。米国では、百貨店やアパレル店舗を中心としたモールが多い。わが国では、総合スーパーを中心にアパレルや飲食店などがモールを構成している。
日本ショッピングセンター協会によると、わが国にあるショッピングセンター(モールを含む)は2017年末現在で3217カ所、総テナント数は16万591店だという。米国のようにわが国でもモールが急速に衰退するという見方もあるが、事態はそう単純ではない。なぜなら、日米の経済状況はかなり違うからだ。
長い目で見ると、アマゾンをはじめとするIT先端企業が小売り分野で存在感を高めることは間違いないだろう。その変化に適応できるかどうかが焦点になる。わが国の小売企業には米国の教訓を生かすだけの時間は残されている。
ショッピング・モールを飲み込むアマゾンの急成長
米国の小売業界を直撃しているのはアマゾン・エフェクトだ。これはアマゾンの急成長により、さまざまな業種が大きな変化に直面している現象をさす。
アマゾンが目指していることは、“物流大革命”だ。“物流”は今後の世界経済を考える、最もホットなトピックの一つである。アマゾンは、ITプラットフォーム上でモノを注文し、代金の決済を行い、その上で、目的地に品物を配送するためのネットワークシステムを作り上げた。
アマゾンは、生鮮食品のネット通販にも取り組んでいる。そのために米国の高級スーパー「ホールフーズ」を買収した。そのうえでアマゾンは米国で年内に新しい食品スーパーを開く予定だという。