アラームが鳴る前に目が覚めてしまう理由

春になると眠くなるのは、日本だけではありません。中国は「春眠暁を覚えず」という有名な漢詩を生み、英語にも「Springtime sleepiness」「Springtime lethargy」という、春の眠気やだるさを表す言葉があります。サマータイムを導入している国では、3月から夏時間となり体内時計が乱れる影響もあると思われます。

ただ諸外国の年度は、9月開始が一般的です。学校の新学期も、秋から始まります。日本は、学校も会社も4月で年度が切り替わります。3月4月は、どんな人にとっても多かれ少なかれ環境の変化を経験する人が多くなり、それだけストレスや緊張を感じることも多くなります。

「新しい部署で大丈夫かな……」「新しいクラスになじめるかしら……」など、3月になると、4月からの新しい環境に対する不安が増してきます。4月から新生活が始まれば、慣れない仕事や人間関係など、緊張の毎日が続きます。翌朝に早く起きなければならないとき、アラームが鳴る前に目が覚めてしまった経験はないでしょうか? これは「注意睡眠」と呼ばれる現象です。心理的緊張も、睡眠を浅くしてしまうことは言うまでもありません。

春は体内時計によって、朝早くから目覚めやすくなるうえに、心理的要因からも、睡眠の質が下がります。結果的に、日中に眠気やだるさに襲われやすくなるのです。

「花粉症」と「低気圧」も眠気の原因になる

春に見られる睡眠の問題で侮れないのは、花粉症などのアレルギー症状です。鼻詰まりや喉のまわりの炎症は、寝ている間の空気(=酸素)の通り道を狭くしてしまい、「睡眠時無呼吸症候群」に近い状態にしてしまう場合もあります。

花粉症の眠気と言えば、抗アレルギー薬による眠気で日中は頭がぼうっとしてしまうことをイメージしますが、夜も鼻詰まりで睡眠の質が低くなっている可能性があるわけです。春が過ぎれば治るとはいえ、きちんと対処をしないと、睡眠不足の状態が続いて体調を崩してしまいます。

そのほかに、気候の変化もあります。太平洋側では、3月に入ると乾燥した冬と違って、低気圧に覆われる機会が増え、雨の日が多くなります。低気圧による心身の不調のメカニズムは、まだ明らかではないですが、現実生活ではよく見る現象です。

科学が発達しても、日の出を人為的に遅くしたり、4月始まりの新年度制度を勝手に変更したりすることはできません。できる範囲で、睡眠を保つ工夫と努力をしていく必要があります。

朝早く明るくなるのが一因だからといって、寝室を完全に真っ暗にして暗室にしてしまうと、今度はちゃんと目覚めて覚醒することが難しくなります。心理的要因も睡眠を悪くしますが、ストレスを一発で消し去るスイッチがあるわけでもありません。

慌ただしい春に、できる範囲で健康的な睡眠を保つ実践的なコツを考えてみました。