「自分の体験、特に失敗談は場の緊張をほぐす効果がありますが、あくまで相手も共感できる範囲であることが大切です。例えば過去に万引をしたとか、浮気がばれて彼女にナイフで刺されたなどの笑えない“失敗談”では、かえって相手が引いてしまいます」

雑談というと、どうしても「ウケる話」をしなければと意識しすぎて喋れなくなってしまう人も多い。

「たしかに高度な雑談力を持つ人は、“面白い話”で他人を笑わせます。でもテレビの芸能人と違い、我々一般人が必ずしもファニーな面白さを目指す必要はないんです。それより目指すべきはインタレスティングな“面白さ”。相手の仕事や趣味に関連した興味深い話題を提供できれば、一気に相手に存在を覚えてもらえます」(田中氏)

そのためには日常的な仕込みも欠かせない。初対面の相手の仕事内容や趣味など基本情報を調べておくことを、秀島氏は料理の「下ごしらえ」にたとえる。

「初対面の人と話すのはいつになっても緊張します。でも、『まずは一品』お出しできる料理(ネタ)を仕込んでおけば、話に詰まることもないので、結果的に自分の緊張を解きほぐすことにも繋がるんです」

そのほか、日々の新聞や雑誌などに目を通し、自分が観た映画や読んだ本の印象をメモしたり、相手から「これ面白いよ(おいしいよ)」と教えてもらったことはすぐに試して感想を伝えるなどの細やかな努力は、「雑談力」上級者が地道に行っている習慣だ。

47都道府県全部のネタを仕込め

ちょっとした会話で、良好なコミュニケーションをとりたいという気持ちはあるが、具体的に何を話したらいいかわからないという人もいるだろう。

そういった「雑談のネタ」はどのように探せばいいのだろうか。

「雑談のテーマに悩む人は多いようです。正直、タブーなのは政治・宗教・他人の悪口・自慢話くらいで、あまり気にしすぎないほうがいいというのが僕の持論です。とはいえ、イザというときのために、ある程度ネタを仕込んでおくと安心です。私の知り合いの中にも、最初のうちは雑談のパターンを5つくらい用意していたという人を知っています」と話す田中氏は、雑談のネタの探し方として、「アニキとタケシが過去住職」という語呂合わせを提案する。

この語呂合わせは「遊び・ニュース・季節・友達・旅・健康・仕事・学校・家族・恋人・住居・食事」の頭文字をとったもので、12の雑談ネタが含まれている。日常的なネタ探しのほか、会話の真っ最中にネタが尽きて困ってしまったときにも、ぜひ思い出してほしい。