一方、ラジオDJを始めた頃、オープニングトークに最も頭を悩ませたという秀島氏は、当時のことをこう振り返る。「台本には『3分、フリートーク』と書かれているだけ。リスナーを惹きつける“つかみ”は、落語の“まくら”や、商談前の雑談に通じるかもしれません。相手の心をぐっとつかんで場を温めたい。そのために活用し始めたのが、コンビニと歳時記でした」。
コンビニには、季節を先取りしたこまやかな商品が溢れていると、秀島氏は話す。毎日立ち寄る人も多いであろうコンビニは、雑談のネタの宝庫。積極的に活用したい。秀島氏には、シチュエーション別に使える「会話のネタ」についても具体的に教えてもらった。こちらも参考にしてほしい。
また、安田氏は雑談にふさわしいネタのうち、もっとも関係を深めやすいネタとして、相手の「出身地(地域ネタ)」を挙げる。理想は「地名や史跡、銘菓などの知識を47都道府県分仕込んでおくこと」(安田氏)。ハードルが高く聞こえるが、地域ネタは時事ネタと異なり、情報が劣化しないため、1度身に付ければずっと使えるというメリットがある。雑談のネタに困るという人は、まずはおおまかな地域ごとに、知識を仕込んでみてはいかがだろうか。
「雑談ネタ入手には海外旅行もいいですが、国内も意識して旅することをお勧めします」(安田氏)。
単語のみの生活をやめれば、人生好転
「雑談は苦手」「コミュニケーション能力が低い」と思い込んでいる人や、なかには「沈黙は金」とばかりに無駄話を厭う人もいるかもしれない。まずはそのような先入観を取り除くところから始めたい。
安田氏の体験では、意識すれば人は1週間で雑談力を上げられるという。
「だまされたと思って1週間、口角を上げ、顔に笑顔をたたえ、高めの声で話しかけてみてください。それも職場や商談相手だけではなく、日頃『風呂、飯』しか言葉を交わさない家族や無言でその前を通り過ぎている会社の守衛さん、カフェの店員さんなどにも挨拶をするんです」
日本人はとかく単語のみで日々の生活を送りがちだ。それをまずは文章単位にすること。試しに居酒屋では「ビール!」を改め、「すみません、ビールを1本お願いできますか」と笑顔で注文してみよう。どんなに混んでいる店でも、対応はガラリと好転するはずだ。
雑談はスポーツと一緒である。日頃から言葉を多く発する人間のほうが、いざというときに説得力のある話、魅力ある発声、盛り上がる雑談ができるのは当然のことだ。
これからの時代、どれだけ人と出会い人脈を広げられるかが、長い人生にチャンスを呼び込む秘訣となるだろう。今日からでも遅くはない。「雑談力」を上げる試みをスタートしたい。