「雑談が苦手」と避けていては人生のチャンスを逃すことになる――各界が誇る「雑談のプロ」3人が伝授する「雑談で人生を変える奥義」とそのネタ探し法とは。

雑談から逃げては、損するばかり

商談先で取引相手と、出社時に同僚や上司と、何らかの言葉を交わさなければいけないのに、「何を話していいのかわからない」「会話が続かない」「沈黙に耐えられず喋り続けて自己嫌悪」という悩みは多方面から聞こえてくる。なかには雑談を避けるあまり、上司とエレベーターに同乗しないよう工夫を凝らしたり、「俺は口下手だから」と開き直ってしまったりする人もいる。雑談は、誰もが日常的に話しながらも、苦手意識を持つ人も多い課題の1つである。

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しかし、そんな人に「雑談なくしては、どんなチャンスも巡ってこない」と喝破するのは、70万部超のベストセラー『超一流の雑談力』シリーズの著者、安田正氏だ。「この本が売れた背景には、想像以上に『雑談』が苦手な人が多い現実があるからだろう」と分析する。

「かくいう私も、実は昔から口下手で人見知り。子ども時代は買い物先で『納豆ください』も言えなかったくらい」と笑う安田氏の価値観が大きく転換したのは、20代のイギリス留学先でのことだった。

「イギリス人はパーティー好き。しかし料理がまずい。だからつまみは会話、つまり雑談です。ただしそのレベルは日本とは段違い。その場しのぎの話題ではなく、自らの知識やユーモアをフル回転させた機知に富んだものでなくてはなりません。語学力だけ鍛えようとする日本人ではかないません」

雑談力がなければ、彼らのコミュニティに入ることすらできないという経験から、帰国後、自らの雑談力を徹底的に鍛え上げた。現在、法人向けコンサルタントとしてコミュニケーション能力や対人対応力などレクチャーを重ねる同氏によると、定年退職後も幸せな人生を送っている人は押しなべて「雑談力」がある人間ばかりだという。

「例えば退職後に大学の客員教授に招かれたり、新しいビジネスや名誉職をオファーされたりする人がいますよね。世の中には勘違いしている人も多いんです。運のいい一握りの人間だけが、ある日いきなりビジネスチャンスを打診されたりすると。だけど本当は、運のいい人なんてこの世にはいないんです。いるのは縁のある人だけ。縁とは人との繋がりです。雑談から始まるコミュニケーションを大切にし、地道に信頼性を培ってきた人のところにこそ、チャンスは転がり込んでくるんです」

恋愛や地域コミュニティでも同じことだ。

「家族と第二の人生を楽しんだり、高齢者向け施設で人気者になる人もまた、雑談が上手です」(安田氏)