「てんこ盛り」の資料はよくわからない
私が行う研修では、受講生の方に自分の資料を持ち込んでいただいて改善したり、研修後に改善したものを提出いただき、私が添削したりしています。そのためかなり多くの業種・職種の方々が作成する資料を目にしていますが、総じて言えることは「Busy(煩雑な、冗長な)である」ことです。私だけでなく、研修を依頼される経営者や人事の方も「うちの会社の資料は、演出がてんこ盛りで何が言いたいかわからないんですよ」とおっしゃいます。Busyな資料は長時間労働の1つの原因になっているのではないかと感じています。今、目指すべきは過剰品質ではなく、最適品質です。
ピーター・ドラッカー氏は「成果を出すために行った労力が少なければ少ないほどよい仕事である」と述べています。これまではどちらかというと、ありったけの資源を投入して、できるだけのことをするのがいい仕事とされてきたのではないでしょうか。資源とは人や時間、またパワーポイントなどツールの機能も含みます。長い時間をかけて、パワーポイントの機能をできるだけ駆使して作る資料は果たしてよい資料といえるでしょうか。国全体で生産性が問われている今、過剰品質、ひいては自己満足になっていないかを問う必要があると思います。
Busyな資料の特徴3つをご紹介します。この3つをやめることだけで、パワポ時短が大幅に実現できると考えてみてください。
【特徴1】線が多い
表の罫線や見出しの囲み、領域を四角で囲んだ下敷きなど、線が多いとBusyな印象になります。私は外資系企業で働いていたので各国の資料を多く目にしてきましたが、日本の資料は総じて、線の本数や種類が多い印象です。例えば、表の外枠は太線、中の線は細線と点線など、複数の罫線を細かく使い分けていないでしょうか。
同じような表でも海外の資料は罫線が少ないのです。罫線を引かず、数字の桁をそろえて、ある程度の間隔をあけています。これが見えない罫線の代わりになっているわけです。実際に外国人スタッフから、「どうしてそんなにたくさんの種類の線を引くのか理解できない。修正するときも時間がかかったり、間違えたりしそうで、メンテナンスしにくいよね。本質に関係のないことをしている時間が無駄だ」と言われたこともあります。
また、1枚のページに複数の情報を書く場合も、間隔をあければ囲み線などは不要です。むしろ線が少ない方が洗練されて見えます。とても太い赤線などで区切ると、中に書かれている情報よりも、線に目がいってしまうのでノイズになっています。まずは、線を引くのをやめてみましょう。想像以上にすっきりし、色や位置の微調整もいらなくなります。