「小嶋さんの言葉がイオン最大の資産」

――経営者として、この本をどのように読まれますか?

イオンにとっては、小嶋さんの言葉、これが最大の資産ではないでしょうか。ジャスコの合併というのは、小嶋イズムで全社合併し、小嶋さんの考えで実質的には岡田屋に経営が統一されていったのではないかと思います。それくらい小嶋千鶴子という人は強い人です。

小嶋さんはその当時ドラッカーなども相当勉強されていました。僕は、ドラッカーはビジネスの学者じゃないと思っています。ビジネスをする“人”とは何なのか、個人と組織の関係、会社との関係、組織はどうあるべきか、世の中はどう動いていくのか、そういうことを説いているのだと思っています。

小売業経営者への警鐘でもある

小嶋さんも経営をそのように理解されていたのではないでしょうか。そしてそれを教育体系の中に盛り込んでいた。だから、これだけイオンは大きくなったのではないかと思います。ほとんどの小売業の人は、「いかに売るか」しか考えていません。しかし、小嶋さんは違った。単に商売だけではなしに、人間とは何かをすごく理解しようとしていた人、それが小嶋千鶴子さん。そういう経営者は小嶋千鶴子さん以外、会ったことがありません。

――小嶋千鶴子さんの哲学がいま世に出てきたことはどういう意義があるでしょうか。

この本からは著者の東海さんが抱いている、小売業への危機感もとても強く感じました。本来、小売業というのはもっと人を大切にして、人に投資するものだった。ところがいまは資本による統治のみで組織だけが肥大化していく。この本は、小嶋イズムを受け継いだ東海さんによる小売業経営者への警鐘でもあると思いました。

(聞き手・構成=プレジデント社書籍編集部)
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