国家としての余裕や寛容さが必要なはず

産経社説は「いずも」についても高く評価する。

「いずも型の空母改修が専守防衛に触れるとの反対論は誤りだ。国民を守る上で有益か、費用を負担できるかという有用性の論理に立って判断すべきで、その観点から改修は妥当である」
「反対論は、政府が保有できないとしてきた『攻撃型空母』の概念を理由に持ち出すが、いずも型の改修には当てはまらない。何十年も昔の冷戦期に生まれた議論であり、百害あって一利なしだ」

「国民を守る上で有益か、費用を負担できるかという有用性の論理」が重要なのは分かる。ただ朝日社説の主張するような「対話」や「政治力」を見失ってはいないだろうか。世界各国がトランプ大統領のように「自国第一主義」を掲げ、他国との協調を失ってはまた悲惨な戦争を繰り返すだけである。

外交の基本は自国の利益をどう獲得するかだが、その利益獲得に行き着くまでには、国家としての余裕や寛容さが必要だ。防衛力増強を評価する産経社説はその辺の思慮がない。「百害あって一利なし」という反対論への非難がそれを象徴している。

産経は安倍政権以上に「防衛力増強」を望む

産経社説はその後半で「大綱には問題もある」とも書く。「おや?」と思ってこの先を読むと、安倍政権以上に「いずも」に固執している。

「公明党の要求で、改修したいずも型にF35Bの常時配備はせず、空母とも呼ばないことになった。当面は運用の習熟をはかる期間で常時配備は不要だろうが、なぜ与党が自衛隊の運用上の柔軟性を損なうのか。空母の機能をもつ艦船を護衛艦と呼び続けるのもおかしい」

さらに産経社説は持論を展開する。

「大綱は、北朝鮮を『重大かつ差し迫った脅威』としたが、より根本的な脅威である中国は『安全保障上の強い懸念』としただけだ。防衛力充実の必要性を示すため、臆せず真実を記してほしい」
「『専守防衛』にとらわれ、『敵基地攻撃能力』の保持に踏み切らなかったのは極めて残念だ。前大綱と同様、引き続き検討することが盛り込まれたが不十分である。空自の長射程ミサイルなど敵基地攻撃能力に転用できる装備は導入するが、正式方針にしなければうまく対応できまい」

読めば読むほど、安倍政権以上に「防衛力増強」を主張している。

各新聞社は、論説委員たちが翌日に掲載する社説の内容について毎日長時間をかけて話し合う。産経新聞社の会議では安倍政権を越える「防衛力増強」の主張に待ったをかける声は出なかったのだろうか。

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