コンビニ業界は、大手3社による寡占化が進んでいる。自販機コンビニやオフィスコンビニといったマイクロマーケットも含めて、全国どこに行っても大手3社のコンビニばかりになり、品揃えや販促・陳列の工夫などに大差がない店舗があふれかえっている。選択肢が絞られることで、購買の多様性が急速に失われつつある。
大手コンビニの総店舗数は、6月末時点で58478店舗。前月比マイナス78店舗で、2カ月連続のマイナスとなった。全国的に、コンビニは飽和状態に陥りつつあるのだ。今回のセーブオンの業態転換により、群馬県内のローソンは約280店舗となった。
セーブオンが誕生した1984年は、バブルの入り口でありコンビニ創成期であった。当時の日本国内の総店舗数は6300店舗前後と、現在の10分の1強しかなかった。明るい未来しか見えていない時代で、小売業を中心とした各企業が、アメリカ発の24時間のミニスーパーというコンビニの業態に魅力を感じ、新規参入を競いあっていた時期だった。
10分に1人が焼きまんじゅうを買う
それから30年以上がたち、コンビニ業界は同質化という閉塞感に覆われている。そのなかにあって、結果としてうまくいかなかったが、セーブオンが取り組んだエリアや個店に合わせた独自性のある品揃えは、むしろ逆に大手3社が参考にするべきところがあったはずだ。
閉店目前の8月17日、セーブオン吉岡上野田南店を訪れた。同店舗には、忠治茶屋の焼きまんじゅう直売所が設けられている。焼きまんじゅうと「群馬県太田市 田端さんちの大和芋使用冷やしとろろそば」を購入し、イートインコーナーでランチをしていたところ、13時から14時の1時間だけで、地元住民と思われるお客が6名も焼きまんじゅうを購買していた。お盆の帰省シーズンだったこと、ローソンに転換してしまったら商品の取り扱いがなくなる可能性があることも購買動機にはあっただろうが、10分に1人というペースには正直、驚きを禁じ得なかった。
筆者はこの愛されぶりを目の当たりにし、コンビニと地場名産品直営店とのコラボ店舗には「リアル小売業の最後の砦」としての可能性があると考えた。ネット通販が隆盛になり、地場名産品も複数の直営店の維持が難しくなっている。セーブオンの「三代目茂倉」の豆腐や「忠治茶屋」の焼きまんじゅうといった他業態とのコラボ店舗の取り組みは、実は未来のコンビニの先駆けだったのかもしれない。