8月31日、群馬県内のコンビニ「セーブオン」が一斉閉店した。店舗は10月から順次、ローソンに転換していく。セーブオンは特産品を活かした品揃えに定評があった。特に人気だったのは名物「焼きまんじゅう」だ。ローソンは、ブランドは転換するが、焼きまんじゅうの販売は一部で継続するという。流通アナリストの渡辺広明さんは、「大手3社の寡占化で店舗が同質化しており、あえて個性を残すローソンの判断は評価できる」と分析する――。
8月31日、閉店当日のセーブオン前橋南インター店(写真提供=セーブオン)

群馬県民が愛したローカルコンビニ

2018年8月31日午前7時、群馬県で「セーブオン」全159店舗が一斉に閉店し、35年の歴史に幕を閉じた。店舗は10月4日より順次、ローソンに転換して再オープン予定となっている。

セーブオンは、ホームセンター「カインズ」やスーパーマーケット「ベイシア」を展開する「いせや(現ベイシアグループ)」のコンビニ部門として、1984年に誕生した。群馬県内ではファミリーマート123店舗、ローソン122店舗を押さえ、462店舗のセブン-イレブンに次ぐ2位の店舗数を誇っている(2018年6月末時点)。「大学に進学して住んだ名古屋にセーブオンがなくてびっくりした」(群馬県出身・30代)というくらい、県民にとっては「あって当たり前」の慣れ親しんだ存在だった。

セーブオンの売りとなっていたのは、「39円アイス」などの低価格路線、そして上州名物「焼きまんじゅう」など特定メーカーの直売品の取り扱いだ。直売品は、店内に直営販売所を設けて販売していた。

セーブオン吉岡上野田南店に設置されていた「焼きまんじゅう」ののぼり(著者撮影)

たとえば、豆腐関連製品では、埼玉県越谷市に本社を置く株式会社篠崎屋が運営する豆腐専門店「三代目茂蔵」の直売所を併設した店舗を複数展開。「いいものをより安く」をコンセプトとする三代目茂蔵の商品は、群馬県ではセーブオンでしか買うことができず、日常の“特別な買い物”のひとつとして人気を博していた。

焼きまんじゅうは、地元出身の侠客・国定忠治の名を冠した「忠治茶屋」の商品だ。酒蔵で育てた酒種を小麦粉に混ぜて作られており、地元内外で愛されるソウルフードである。「セーブオンといえば焼きまんじゅう」という群馬県民は少なくない。

PB拡充も大手3社にはかなわなかった

こうした取り組みで地元になじみ、もっとも多い時期には群馬県以外にも関東や南東北など10県に進出し、600店以上を展開していた(2015年2月期)。

だが、コンビニ大手3社が進めるポイントカードによる囲い込み、ATM・インターネット通販系の受け取りなどのサービス展開の遅れにより客足が遠のき、徐々に独自の経営が厳しくなっていった。

商品面でも、2012年からセーブオンはプライベートブランド(PB)を拡充して力を入れてきたが、大手メーカーとタッグを組んだ商品開発でラインナップを揃える大手3社のPBには歯が立たなかった。そして2016年、ローソンとメガフランチャイズ契約を締結。ローソンへの転換は先に山形県・福島県・茨城県・埼玉県・千葉県・栃木県・新潟県で進み、一斉閉店時には群馬県にしかセーブオンは残っていなかった。