ローソンはIoTや人工知能(AI)を活用した「次世代店舗」の構築に乗り出した。スマホの専用アプリで決済や電子タグを活用した無人レジ決済、電子棚札の開発を進めている。ローソンの取り組みはコンビニそのものを変革するのか、今後の実用化が注目される。

ビルの最上階にある「次世代店舗」の研究施設

東京・品川駅から徒歩で約10分、ビルの最上階の一室にローソンの店舗がある。もちろんそんなところにお客が来るわけではない。この店舗こそ、ローソンの英知を結集した「次世代店舗」の研究施設「ローソンイノベーションラボ」だ。年内にはここの研究成果を実践するデジタルローソンを立ち上げ、その後、多店舗展開していくという。

棚に大きなモニターを設置して、棚札用のスペースにも電子表示できるような棚を開発。

「この研究施設のミッションは、ローソンが考える将来のデジタル店舗のプロトタイプ(システム開発の初期段階の試作機)を構築することです。技術によっては実店舗にいきなり導入するとお客様に迷惑をかけたり、店員の仕事をじゃましてしまう可能性があります。ここで技術検証し、OKなら実店舗で実験する、このサイクルを複数回回して、実用化を目指します」

こう語るのは次世代店舗の開発を進めるオープン・イノベーションセンター(OIC)のマネージャーの谷田詔一氏だ。OICは2017年5月、人手不足や人件費の高騰などの経営課題を解決するために竹増貞信・ローソン社長直轄の組織としてスタートした。

「AIなどが叫ばれている中で、コンビニでは仕事をしながらそうした最新技術にしっかりと取り組んでくることができませんでした。しかもローソン1社ではそうした問題に対応していくことはなかなか難しい。さらに店舗のオペレーションを効率化してお客様にこれまでにない買い物体験を提供したい。そんな2つの思いから、パナソニック、日立製作所、米ICチップ会社のインピンジ、仏の画像認識ソフト会社のコグニャックなど17社と組んでこの組織を立ち上げました」

会議室だけで話をしていても実効性のある結果が挙げられないと昨年10月、研究施設を設置した。

「OICができるまでは、ローソンがお付き合いしていたのは大企業ばかりだったのですが、ただ大企業ばかりだとオープン・イノベーションは起きないので、起業して半年足らずのスタートアップの会社やシリコンバレーの会社なども取り込みました」

こうした会社とのパイプづくりには三菱商事と米国のシリコンバレーのベンチャー企業の紹介だ。ちなみに谷田氏もまた三菱商事からの出向で、シリコンバレーのベンチャー企業はローソンの出資先の1つ。ここからも月に1度、企業の紹介があるという。

「企業のほか省庁とも一緒にやっています。電子タグは経済産業省、ドローンは国土交通省、このほか同業他社などとも協力しています」