3社の共同会見を見て、筆者が感じたこと
通信大手のKDDIが、50%の大株主としてコンビニエンス・ストア大手のローソンのTOBに参画すると発表しました。異業種の大手企業同士による資本業務提携は異例です。現状ローソンは東証プライム上場ですが、三菱商事が50.1%の株式を持つその子会社であり、TOB成立後に上場は廃止され、三菱商事とKDDIが50%ずつの株式を持ち合い共同経営体制に移行する計画といいます。
3社社長が顔をそろえた記者会見で強調されたのは、「新しい未来のコンビニの創造」でした。ローソンの竹増貞信社長はこれを、「グローバル・リアルテック・コンビニ」という言葉で象徴的に表現したのですが、会見からはその具体的な姿は見えませんでした。大手3社による大型資本提携会見の割にはあまりに内容が薄い、そう感じたのは私だけでしょうか。むしろこの「3社共同戦線」には、なぜか具体策は詰めずに合意した、という印象を持ちました。
気になるのは、この「3社共同戦線」、一体誰が仕掛けたものなのかという点です。
会見で明らかにされたのは、2023年5月に三菱商事がKDDIにローソンの共同経営を持ちかけたということ。会見席上で三菱商事の中西勝也社長は、「ローソンの価値向上に悩んでおり、新しい価値の提供が必要との認識に至った」と話しています。すなわちこの資本業務提携は、ローソン、KDDIの「現場の想い」から発せられたものではなく、あくまで三菱商事の「ローソンをなんとかしたい」という想いから資本家の立場で動いたものだったのです。
「業界3位」が指定席になりつつある
ローソンはもともと、1975年にスーパー大手のダイエーがコンビニチェーンとしてスタートさせ、その後ダイエーの業績不振を受けて2001年に三菱商事の持分法適用会社になっています。02年に就任した三菱商事出身の新浪剛史社長(現サントリーHD社長)の下で業績を回復させます。
14年に新浪氏がサントリーに転じると、元ユニクロの玉塚元一氏が後任に就きました。玉塚氏は成城石井の買収などを推し進めたものの、大きな進展が見られぬまま業績は停滞状態になります。この状況に業を煮やした三菱商事は、2017年にローソンを子会社化して、玉塚氏に代わる社長として竹増氏を送り込んだのです。
その後コロナ禍でコンビニ業界全体が大きなダメージを被ったここ3年ほどでしたが、直近24年2月期の業績予想では、コロナ明けの消費回復の恩恵もあり、純利益で前期比68%増の約500億円という過去最高益を見込むほどに大幅な回復基調にはあります。
しかし業界トップであるセブン‐イレブンの背中は遠く、23年3~11月での1店舗あたりの平均日販は54万9000円で、セブン‐イレブンの69万8000円はおろかファミリーマートの55万3000円にも届かず、業界3位が指定席になりつつあるという危機感が三菱商事を覆っていたのです。