楽天グループの経営が苦境に立たされている。2月14日に発表した2023年12月期の連結決算で、最終損益は3394億円の赤字だった。その背景には携帯事業の苦戦がある。経営コンサルタントの鈴木貴博さんは「楽天モバイルが生み出す赤字で経営が傾いていることが鮮明になってきた。それでも楽天グループが携帯事業を続けるのは“やめないほうが得”だからだろう」という――。
2023年8月2日、4年ぶりに会場で開催された「Rakuten Optimism2023」で基調講演をする楽天グループの三木谷浩史会長兼社長。「チャットGPT」を開発した米オープンAIと協業することを明らかにした(神奈川県横浜市のパシフィコ横浜)
写真=時事通信フォト
2023年8月2日、4年ぶりに会場で開催された「Rakuten Optimism2023」で基調講演をする楽天グループの三木谷浩史会長兼社長。(神奈川県横浜市のパシフィコ横浜)

楽天グループの株は決算発表後に急上昇

楽天グループが2月14日、2023年12月期の連結決算を発表しました。最終損益は3394億円の赤字で、これは5年連続の最終赤字ということになります。そして携帯事業の営業損益は3375億円。つまりほぼほぼ楽天モバイルが生みだす赤字で経営が傾いているということが鮮明になってきています。

後述するように決算内容も、楽天モバイルのこの先の見通しについての発表も、内容自体は芳しいものではありませんでした。にもかかわらず、決算発表の翌日の楽天グループの株価は一時ストップ高。その翌日も株価は上昇し決算発表後の3日間で、楽天グループの株は25%以上も上昇しました。

発表を聞くかぎり楽天グループは携帯事業をあきらめるつもりは全くない様子です。にもかかわらず、巨額の投資が続く携帯ビジネスを抱える楽天の株を買う投資家は何を期待しているのでしょうか? そのメカニズムを解説してみたいと思います。

赤字幅は約1400億円も縮小したが…

今回の決算発表の中でも楽天モバイルの赤字状況について詳しく見てみましょう。前期の赤字が4792億円だったところから1年間で3375億円と赤字幅は約1400億円も縮小しています。これまで巨額の赤字を生み出してきた基地局への投資が大幅に減ったのが主な原因です。今期1776億円に抑えた設備投資費用は、来期は約1000億円とさらに減る計画なので、計画通りにいけば来期の赤字額もさらに縮小することは期待できます。

とはいえ、このままいけば来期も楽天モバイルは巨額の赤字を生むことには間違いがありません。しかもその赤字幅は楽天グループの目標よりも大きくなる可能性があります。

三木谷CEOは決算発表で2024年度末までに楽天モバイルを単月で営業黒字化させる目標だと語りました。そしてその前提条件を発表したのですが、それは契約回線数が800万~1000万回線に増え、かつARPU(契約あたりの月間収入)が2500~3000円になることだと言うのです。