2024年の黒字達成は非常に厳しい
現状の楽天モバイルでは契約数は609万回線、ARPUは1986円です。1年前と比べれば回線数は150万回線増えたのですが、増えた最大の要因は法人契約の増加でした。傘下の楽天市場の出店企業を中心に営業をかけ法人契約数を増やすことには成功したのですが、法人契約ユーザーの利用額が少なくなったためにARPUは逆に60円、前期比で減りました。
日本の携帯ユーザーの大半は月間のデータ利用料は20GB未満で、楽天モバイルの料金体系では月間の利用料は1980円以下になります。その前提で今期、回線数を200万回線増やしたうえにARPU全体を2500円に上げるというのは目標としては無理を感じます。論理的には2024年も楽天モバイルが単月黒字を達成するのは非常に厳しいことでしょう。
その状況下で、楽天グループの経営の屋台骨を揺るがしているのは1.8兆円にのぼる有利子負債の存在です。ゼロ金利下の日本ですから金利負担自体はなんとか耐えられている一方で、スケジュールが刻一刻と近づいてくる負債の返済スケジュールが経営の大きな負担になってきています。楽天グループによれば2024年中の返済や社債の償還については資金のめどはたったというのですが、赤字のまますぐにまた2025年がやってきます。
主力ビジネスが少しずつ切り売りされている
さらに言えば、この有利子負債の返済の原資として、楽天グループの主力ビジネスが少しずつ切り売りされています。まず楽天銀行が上場する形で外部に売りにだされ、つぎに楽天証券がみずほFGからの増資を受け入れる形で、資金と引き換えに楽天グループの持ち分が大幅に減る事態になりました。
このままいけば、楽天グループが保有する虎の子のグループ会社がつぎつぎと売りに出される事態になってもおかしくはありません。
さて、このような事態で楽天グループは何を考えているのでしょうか?
この記事の主眼はふたつあります。楽天グループがそれでも携帯事業をやめない理由はどこにあるのか? そして、このような悪い決算発表の直後に楽天の株価が25%以上も上昇した理由は何なのか? このふたつの謎を解明することです。