「出来心で大麻を」執行猶予付き判決で終了と思いきや

男「出来心で最初に大麻を吸ったのは私でした」
女「その場に私もいて一緒に吸いました。私と彼とは同罪です」
男「その後、どちらともなく脱法ハーブもやってみようということになり、ふたりだけで使用しました」
女「ネットを通じて購入しましたが、むしろ私が積極的だったかもしれません」

あくまでも音楽を楽しむためだったと強調しながら、相手の不利にならないよう、言葉を選んで発言しているのがよくわかった。ふたりの目に浮かんだ涙も自然で、自分たちの行動が調子に乗りすぎていたことも理解できているようだ。

男「目先の欲望に負けた自分が恥ずかしいです。これで目が覚めました。反省して済むことではありませんが、○○(女性名)とよく話し合い、二度とこのようなことをせずに暮らしていけるようにしたいと思っております」

※写真はイメージです(写真=iStock.com/delihayat)

やったことは悪いが、どちらも初犯である。仕事は失ってしまったけれど、執行猶予付き判決になるのは確実。力を合わせれば、いくらでもやりなおすことができるはずだ。

被告人の男はしっかり仕事をしていたようだし、女のほうも会社員として地道に働いていた。証言を信じれば、今回だけハメを外してしまったのだ。

再犯の可能性は低そうだし、同じ傷を持つ者同士だから、これを機にきずなを深めていけばいい。筆者は親戚のおじさんのような目線で公判の行方を眺めていた。弁護人は、被告人から反省の言葉を引き出した後、励ますように問いかけた。

弁護人「裁判が終わったら、どうするつもりですか?」
男「すぐにとはいきませんが、仕事を探し、生活が落ち着いたら○○と結婚したいと考えています」

「彼とは別れることになると思います」

法廷でここまで言うのだから、二人の間では結婚の約束ができているのだろう。男への質問が終わると、女の弁護人が同じことを問いかける。ところが……。

女「それについては、ゆっくり時間をかけて結論を出そうと思います」

予期せぬ答えだったのか、男は意味を探るような目で女を見つめ、やがてちらっと傍聴席を見やって視線を膝に落とした。誰を見たのか。傍聴席最前列に陣取った、女の両親である。被告人たちは保釈中だが、裁判が終了するまで会ったり話したりすることはできず、離れて暮らしている。女は両親のいる実家に身を寄せていた。

女の答えは弁護人にとっても意外だったらしく、改めて質問がなされた。

弁護人「結婚を誓い合っているとうかがっていますが」
女「そう……でしたが、いまはわかりません。というか、たぶん彼とは別れることになると思います」