スウェットやジャージ姿でも有罪とは限らない
今回は「外見」について考えてみたい。裁判傍聴をしていると、被告人の外見(第一印象)と事件の内容の落差に驚かされることが少なくないのだ。
裁判時に筆者が被告人の外見でチェックするポイントは、服装、顔、声である。彼らはアクセサリーや小物などを持っていないので「対象」は限られる。
裁判では被告人が手錠をかけられた状態で入廷するが、その見た目のインパクトも割り引いて考えている。手錠は逃げたり暴れたりするのを防ぐものだろう。だが、被告人は容疑を否認しているかもしれず、冤罪の可能性もあるのに、こんな姿で現れたら大抵の人は審理が始まる前から「犯人なんだな」と思いかねない。犯罪者の象徴であり、拘束を目的とする道具でもある手錠にはそれほど強い印象を残すのだ。
裁判員裁判で被告人に手錠をかけないのは、一般人である裁判員に見た目の先入観を植えつけないための配慮である。
▼人は直感的に人の外見でいい人か悪い人か判断する
さて、初めて被告人を見たとき、まっさきに目に入るのは服装だ。
保釈されていれば別だが、被告人はスウェットやジャージ姿の、着の身着のままということばがピタリと当てはまる衣服であることが多い。少し小ギレイなところではTシャツにジーンズ姿ということもある。以前、いつもピシッとした白シャツに折り目のついたパンツを履いて入廷する被告人がいたが、それは例外中の例外。だいたいはさえない格好なのだ。
といって、地味でおとなしく見える被告人ばかりではない。殺人事件の被告人が派手なキャラクターの描かれたジャージを着ていたり、リストラされて食い詰めてホームレス生活を送った揚げ句、窃盗で捕まった犯人が「I ♡(ハートマーク)TOKYO」とプリントされたTシャツ姿だったりして、ふざけているのかと思うこともある。判決に影響がなくても、法廷には遺族などの関係者がきているかもしれないのだ。そんな格好で「すみません」と言われても真実味がないだろう。
顔やしゃべりかたも重要なポイントである。顔では、とりわけ目つきと口元が第一印象に大きく関わってくる。ギラギラと周囲をにらんでいたり、死んだ魚のようにドロンとした目つきをしたりしているとどうしても印象が悪い。また、口をポカンと開けたり、不敵に笑ったりしているとマイナスの印象しか傍聴人に与えない。何をいっているか聞き取れないモゴモゴ声も自信のなさを表すように聞こえ、直感的に「信用できない」と思ってしまう。