難しいことをわかりやすく、わかりやすいことを面白く
私も一二度顔を出したことがある。最初の頃は、店のほうでも官僚たちが来ていることが宣伝になると思ったのだろう、名刺の束を持ってきて、われわれに見せてくれた。
こうした店で毎晩のように接待されていると、テレビのワイドショーでも毎日取り上げるようになり、大蔵官僚は許せん、こんな役所はいらないという声が澎湃(ほうはい)と沸き上がり、ついには大蔵省は解体され、財務省と金融監督庁とに分けられてしまうことになるのだ。
大蔵省汚職事件も、ノーパンしゃぶしゃぶ接待が出てこなかったら、解体までいったかどうか。
週刊誌のモットーは、難しいことをわかりやすく、わかりやすいことを面白く、読者に提供することである。ノーパンしゃぶしゃぶ接待報道はその原点のようなものだが、今回の週刊新潮(4/19号)の福田淳一・財務次官(58)のセクハラ発言報道も、週刊誌の原点と底力を見せてくれた。
後に、あれがきっかけで財務省解体までいったのだと、いわれることになるかもしれない。
「うそつきは財務省の始まり」だとして「性事問題」化
新聞の社説や国会でも「浮気しよう」「おっぱい触っていい?」「手しばっていい?」という言葉が飛び交い、「うそつきは財務省の始まり」だとして「性事問題」化した。
森友学園問題で、経緯をまとめた公文書を改ざんした責任を問われた佐川宣寿前国税庁長官が、国会での証人喚問で、「売却手続きに安倍首相や昭恵夫人の影響があったとは、一切、考えていない」といい切った。
だが、改ざんした中には昭恵夫人の名前があり、当時、彼女は、できる予定の小学校の名誉校長になっていたことは、当時の担当者ははっきり認識していたのである。
また、改ざんを命じられた一人であった財務省近畿財務局の上席国有財産管理官が、「勝手にやったのではなく財務省からの指示があった」「このままでは自分一人の責任にされてしまう」というメモを残して自殺しているのだ。
魚は頭から腐る。トップの嘘を隠すために、下の者が嘘を重ね、末端の人間を死に追いやってしまう構図は、異常というしかない。
だが、モリ・カケ問題から何としてでも逃げ切ろうとする安倍首相のもくろみを、このセクハラ発言はぶち壊してしまった。
「セクハラ被害に遭った記者は名乗り出てほしい」
報道以後の動きを見ていこう。福田事務次官はセクハラ発言を、真っ向から否定した。
すると、新潮は待ってましたとばかりに、福田と女性記者とのやりとりの音源を、女性記者の発言部分だけを消して公表したのだ。
これで彼の進退は窮まったと思った。だが、財務省は16日、福田から聞き取りをしたとして、「女性が接客をする店では、女性と言葉遊びを楽しむようなことはあるが、女性記者とそんなやりとりをしたことはない」と、あたかも、情報源がでっち上げたのではないかといいたげな「聴取結果」を発表し、福田本人は新潮社に対して訴訟を準備していると、逆に恫喝してきたのである。
さらに、財務省は同省の記者クラブに加盟している各社に対して、「セクハラ被害に遭った記者は名乗り出てほしい」と呼びかけた。新潮(4/26号)で政治部デスクがいっているように、
「財務省は、手をあげることなんてないだろうと高を括っているのです」
麻生財務相も、発言が事実ならアウトだがといいながら、優秀な福田次官を更迭する考えはないといい切った。
だが同じ16日の産経新聞朝刊は「福田財務次官 更迭へ」と一面で報じていた。