ネット戦略は「もっと店に来て」ではムリ

また、セブン&アイグループは、各事業会社の店舗で商品を購入する際に利用するスマートフォン向けのアプリ、「セブン・アプリ」を開発し、2018年5月より配信を開始するといいます。

アプリはセブン-イレブンやイトーヨーカ堂、そごう・西武など国内のグループ約2万店で利用可能で、登録した会員の購買履歴データなどを分析し、その個人に合った商品・サービスを提案する。

また、会員には店舗での購入額に応じて、商品やサービスと交換できるポイントも付与するといいます。

ただ、このアプリは本質的にはリアル店舗をベースに発想しています。「もっとお店に来て、お店にある商品を買ってください」と促す。要は、リアルにネットをプラスする足し算から抜け出ていないように、わたしには思えます。

それは、最大の店舗網であるセブン-イレブンはフランチャイズチェーンであり、個々の店舗はオーナーの経営であるという業態の1つの宿命なのかもしれません。

イオン×ソフトバンク連合の狙いとは

セブン&アイグループと並ぶ、もう一つの流通の雄、イオンでも2018年2月、大きな動きがありました。ソフトバンク、ヤフーとともにネット通販事業で提携する方針を固めたのです。

具体的には、食品や衣料品、日用品などを扱う独自のネット通販を始める。3社が提携することで品揃えや顧客情報を共有し、ネット通販で先行するアマゾンジャパンに対抗するのが目的です。

新たなネット通販では、ソフトバンクやヤフーがもつネットの市場分析技術、イオンの物流網などそれぞれの強みをもち寄り、イオンの店舗運営でも協力する。人手不足に対応するため売り場にソフトバンクグループが開発したロボットを導入するなど、先端技術の活用も検討されています。

この提携を成功させるためには、ネットに精通したソフトバンク、もしくは、ヤフー側から、リアルのよさをよく理解し、なおかつ、強力なリーダーシップを発揮できるリーダーが就任し、プロジェクトを引っ張っていくことが必要でしょう。もし、それが実現すれば、ネットとリアルをどのように融合していくか、注目すべき存在になるでしょう。

それ以上に目を離せないのが、アマゾンの動きです。アメリカで、デジタルシフトにおくれたホールフーズを買収し、アマゾン・ブックスを展開するなど、リアルへの進出を加速させています。日本でも今後、同じ動きが始まる可能性は否定できません。

アマゾンがリアルに進出すれば、リアルで買う顧客の行動と、ネットで買う顧客の行動の両方のデータをどんどん蓄積し、「スーパーでこの商品を買う顧客は、ネットではこの本を買う」といった具合にネットとリアルの境目を超えたデータをもつことで、より顧客中心主義のサービスを充実させていくことでしょう。