アメリカ国民の9割を半径10マイルでとらえる

ウォルマートは2017年には、アマゾンと並ぶネット企業の巨人、グーグルとネット通販事業で提携にも踏み切りました。

グーグルのネット通販・宅配サービス、「グーグル・エクスプレス」に日用品など十数万点を出品。グーグルのAIスピーカー、「グーグルホーム」やスマートフォンに話しかければ、声で注文ができるサービスを開始しました。

ウォルマートのネット事業への注力ぶりが鮮明にあらわれているのは、新規出店計画です。

アメリカ国内での新規出店は、小型店も含め、過去25年でもっとも少ない25店舗以下までに絞り込んでいます。また、過去数年で不採算店舗の閉鎖も進めてきました。

多くのコストがかかる大型店舗を整理することにより、ネット事業への大型投資を推進するということでしょう。

2017年に入ってから、店舗の従業員がネットで受けた注文を宅配するサービスの実験も始めました。

全米4700カ所の店舗網はアメリカ国民の9割を半径10マイル(約16キロメートル)圏でとらえます。このリアルの店舗網と従業員は、アマゾンといえども、そう容易に確保することは難しいでしょう。

また、ウォルマートが強みを発揮するのは、生鮮品の分野です。顧客がネットで購入した生鮮品を最寄りの店舗で受けとれるサービスに力を入れ、すでにある1100店の対応店に加え、2018年には110億ドルを投じて、1000店追加する計画です。

アマゾンも生鮮品販売の足場づくりのため、ホールフーズを買収し、商品の値下げ戦略を開始しました。アマゾンは利益を値下げの原資に投入しますが、一方、ウォルマートも圧倒的な購買力を活かした価格の安さをネットでも発揮するでしょう。