状況と原因を特定するときに使える方法
問題の起こっている状況と原因を特定するのに、簡単に使える方法があります。
「わかっていること」と「わかっていないこと」を2軸の表に仕分けていく方法です。
トラブル発生時、まったくもって何が起きているのかわからない状況ではありつつも、いくつかわかっていることもあるはずです。
システムの場合は、「間違いなく正常に動いている機能」は「わかっていること」に仕分けられます。
仕分けていく中で、「わかっていないこと」が判明してきたら、さらにそれを「わかっていること」と「わかっていないこと」に仕分けていきます。このステップを繰り返すと、怪しいエリアが徐々に絞られていきます。
ある程度まで怪しい箇所が絞られてきたら、今度はそこを集中的に精査して、原因の特定にかかります。メンバーも増員して、一気に調べあげるのです。
エリアが絞れていない状況で人を投入すると、多くの人数と時間が費やされてしまいますが、調査するエリアが小さければ、最小の労力と最短の時間で問題の原因を特定することが可能になります。
身近な事象を例にあげるなら、「朝、出社したら、財布がない」ということに気づいたとき――。
そんなときは、「朝起きてから会社に着くまで」を振り返り、どこまではあったかを確認するはずです。
「家を出るときはあった」とか、「電車に乗る前、駅に行く途中のコンビニで買い物をしたときに財布からお金を出した」とか。
「確実に手元に財布があったとき」を明らかにすると、財布をなくした可能性のある場所が絞りこまれていきます。
「電車に乗ったときまで確実にあった」と判明すれば、コンビニに問い合わせする必要はなくなります。「電車に乗っている間が怪しい」と絞られてきたら、鉄道会社の落とし物センターに問い合わせればいいわけで、アクションは最小になります。
――焦ってしまいそうなときこそ、手を止める。
トラブル時には、すぐに動きたくなるものですが、むやみやたらに飛び込む前に、立ち止まることを習慣にしましょう。
元日本IBMエグゼクティブ・プロジェクト・マネジャー。横浜国立大学大学院環境情報学府工学研究科修了。2002年に日本IBMにシステム・エンジニアとして入社。2017年より現職。著書に『複雑な問題が一瞬でシンプルになる2軸思考』『仕事が速い人は「見えないところ」で何をしているのか?』(以上、KADOKAWA)がある。