[原則(3)]ムダに考えない

考える対象は何にせよ、まず最初に、どのような枠にするかを考えることが重要です。枠さえ作ってしまえば、あとは中身を埋めることに集中すればいいだけです。余計なことを考えなくなるので、効率的に作業が進みます。

枠がないまま中身を考えても、あっちに手をつけたり、こっちに考えをめぐらせたり、整理されていないバラバラの情報に手こずり、結局、時間のムダも発生します。

枠を使えば、30個の問題もスムーズに進む

私の見ているチームの1つで、次のようなことがありました。

リーダーが真っ青な顔をして、「いま、問題のあるタスクが30個もあって、どうしていいのかわからなくなりました。いったい、どれからどうやって手をつければ……」と私のところに相談にやってきたのです。

話を聞くと、かれこれ半年以上、解決を先延ばしにしていたことが積もり積もって30個もたまってしまったとのこと。プロジェクトの大きな節目が1カ月半後に迫っている中、何からどう手をつけていいかわからなくなってしまっていたのです。

私はその報告をざっと確認し、30個の問題について、それぞれ6つの観点から、マトリクスを使って情報を整理するように指示しました。

【6つの観点】
(1)課題の内容 (2)現在の状況(3)担当者(4)難易度(5)影響度(6)優先度

このマトリクスで枠に沿って整理した結果、実は、3分の1の問題については、すでに方策も決まっていて、解決に向かっていることがわかりました。

そして、残りの3分の2の問題を「影響度」と「優先度」の高いものから順次片づけていくという方針にしました。

これまでどうしていいかわからずに、ただ頭を抱えていたリーダーが、状況を整理する枠を作ることで、簡単に状況を把握することができ、そして問題解決へ前進することができました。

このタテとヨコの2軸を使って問題を整理することを、私は「2軸思考」と呼んでいます。複雑な問題をシンプルに「構造化」し、書き出して「見える化」する。このたった2つのことを満たしていれば、あらゆる問題は解決することができるのです。

デカルトは「困難は分割せよ」と言い、ビル・ゲイツは「問題は切り分けろ」と言いました。そして、レオナルド・ダ・ヴィンチは「シンプルさは究極の洗練である」という言葉を残しています。これらは、あらゆる仕事において真実です。

もし、みなさんが何らかの問題を抱えているならば、ぜひ、試してみてください。

木部 智之(きべ・ともゆき)
元日本IBMエグゼクティブ・プロジェクト・マネジャー。横浜国立大学大学院環境情報学府工学研究科修了。2002年に日本IBMにシステム・エンジニアとして入社。2017年より現職。著書に『複雑な問題が一瞬でシンプルになる2軸思考』『仕事が速い人は「見えないところ」で何をしているのか?』(以上、KADOKAWA)がある。
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