「前向きになった」「人生観が変わった」

権限を必要としないリーダーシップを組織に定着させるには、トップや上司の理解が欠かせません。現場や部下からの提案を歓迎する風土が必要です。また、社内で集合研修を行う場合は、階層別などで各部門からバラバラに集めて行うだけでなく、部署ごとに行ったほうが、組織開発にもつながり、フィードバックの文化もつくりやすくなります。階層別に行う場合は、上位階層から実施したほうが、率先垂範にもなり、組織に浸透しやすくなります。

このリーダーシップは組織内だけでなく、取引先との関係においても有効です。ゼロサムゲームではなく、双方の利益の和が増えることを目標として共有し、そのための提案を行い、それに対するフィードバックを受け、さらに提案を行うことを繰り返して、信頼関係が徐々に構築されていきます。

権限を必要としないリーダーシップを学んだ学生は、「自分から仲間を集めて行動すれば、物事は変えられる」ということを実際に体験するので前向きになりますし、なかには「人生観が変わった」と言う学生もいます。また、私が研修を担当したある企業からは、3年間継続して取り組む中で、従業員たちが新しいアイデアを積極的に提案するようになったという声を聞いています。

今、経営でも政治でも、さまざまなところで、上の人たちに任せておけないようなことが起きています。それを自分たちの力で解決するには、権限を必要としないリーダーシップが必要です。このベーシックなスキルを身につけた人が増えていけば、日本はかなり変わるのではないかと思います。

また、旧来の権限を伴ったリーダーシップは、男性的な姿勢を望まれることが多いですが、権限を必要としないリーダーシップは、女性にも発揮しやすいスキルと言えます。特に同僚支援は女性が得意な部分です。このリーダーシップが広がれば、女性のリーダーが増えることも予想されます。

(構成=増田忠英 写真=時事通信フォト)
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