読売社説以上に分かりにくい毎日社説

読売社説以上に分かりにくいのは昨年12月29日付の毎日新聞の社説である。分かりにくいというよりも、的外れといった方がいいかもしれない。

「貴乃花親方処分めぐる議論」とテーマを付け、その見出しは「排外的な風潮が気になる」である。一体、どこが排外的なのか。毎日の社説は何を主張したいのだろうか。考え込んでしまう見出しである。

毎日社説はその前半部分から「気になるのは、この問題をめぐり、元横綱の暴力や貴乃花親方の態度とは無関係な排外的な議論が目に付くようになったことだ」と書き出す。

「九州場所千秋楽で、優勝した横綱・白鵬関が『うみを出し切る』と話し、観客に万歳三唱を促した頃から、こうした傾向が出始めた」
「貴乃花親方を擁護する意見とともに、ナショナリズムをあおるような声がインターネットを中心に広がっている。『相撲は日本の国技で、外国人は国技、神事が何たるかを理解していない』といったものだ」
「また、白鵬関に限らず、モンゴル人力士全体を否定する意見も見受けられるようになった」

「ネット右翼」の問題を取り上げるのは的外れ

なるほど。毎日社説はナショナリズムをあおる風潮を問題視したいのか。ナショナリズムのどこがいけないのか。今回の問題はあくまでも、暴力を根絶できない角界の古い体質に由来する。そこにナショナリズムを持ち出すのは無理がある。

「ナショナリズムをあおるような声がインターネットを中心に広がっている」というのは、いわゆる「ネット右翼」の問題を取り上げたいのだろう。毎日社説の憂慮は理解するが、そこを社説で論じたいならテーマをもっと広く捉えて別の時期に論じるべきではないか。この書き方では論旨がぼやけてしまう。

毎日社説は「スポーツにおいてナショナリズムがファンを高揚させる一面を持つことは否定しないが、今の風潮には危うさを感じざるを得ない」とも指摘するが、危うさを感じるのならば、今回の角界の問題から距離をおいて、腰を据えて論じるべきだった。

(写真=時事通信フォト)
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