「決まらない会議」は時間のブラックホール!
もうひとつ、組織の非効率性を顕著に映し出すのが、会議の運営のされ方だ。読者自身の出席する会議について想像してみてほしい。会議の中で明確な意思決定、指示が下されるケースはどの程度あるだろうか。呼ばれたのでなんとなく参加し、明確な議題もなく、なんとなく議論がなされ、なんとなく時間が来たから解散する、といった会議が多いのではないだろうか。
図2は、実際に会議の効率性を阻害する要因についての回答をグローバル、日本企業で比較したものである。これを見ると日本企業における会議運営がいかに非効率であるかがわかるだろう。特に深刻なのは「明確な議題や目的が定まっていない」「参加者の準備不足」「ネクストステップおよび責任者が明確に定義されない」「参加者の役割が不明確」といった項目において、グローバル企業との差が顕著に見られる点だ。こうした無駄な会議のために、多くの社員が出席し、会議のための調整、資料の準備のために毎晩残業している。
これは企業に限った話ではない。たとえば、都庁の築地市場移転問題にしても、誰が最終的な意思決定をするのかが明確でなく、意思決定の基準も不明確なまま、なんとなく暗黙のうちに意思決定がされていった結果、責任の所在が不明確になり、結局なし崩し的に意思決定を延期せざるを得なくなった。これにより生じた費用は計り知れない。
無駄な会議に組織の希少な時間を費やさないためには、組織として「規律を持った」会議運営のルールを決めることが肝要である。
第一に、無駄な会議を増やさないと同時に、既存の会議についても必要性を改めて見直し、本当に必要なもののみに絞り込むこと。週次の事業部会議など、参加者の予定を前もって抑えるために定例会議を設定している組織も多いが、こうした会議が本当必要か再点検をしてみるべきだろう。会議を廃止する判断は、新たな会議を企画するよりもはるかに重要である。
次に、会議ごとにアジェンダを明確にすること。それぞれの会議でどのような意思決定をするのか。それが明確になればおのずと必要な参加者も見えてくる。会議のアジェンダと意思決定者が決まったら、出席者も意思決定に必要な社員だけに絞り込む。そうすれば無駄な根回しが必要なくなり、会議の中でオープンに議論を戦わせることができる。少人数の方が議論もはかどるし、出席者一人ひとりの主体性も高まる。
さらに、議論しっぱなしにしないことも重要だ。可能な限り、その会議の場でネクストステップは何か、つまり「誰が・いつまでに・何を」するのかを明確にする。いずれにしても、時間を限りある希少資源ととらえ、組織的に規律を持って無駄を排していくことが必要なのである。