これからは同期の7割が非管理職(係長以下)のまま定年を迎えることになる。出世競争が激しくなる一方で、「働き方改革」の影響で労働時間の管理は厳格化しつつある。仕事量が変わらないのに労働時間を減らされれば、職場はギスギスしていく。社内の人間関係にも深刻な影響が出るだろう。人事ジャーナリストの溝上憲文氏が、そんな職場の現状をリポートする。
短時間で効率よく仕事した人が出世競争に勝つ
9月は4月と並ぶ人事異動の季節だが、めでたく昇進した人、惜しくもできなかった人、あるいは部下を持つ「ライン管理職」から「部下なし管理職」に格下げされた人もいるかもしれない。
今のご時世ではポスト不足で課長にもなれない人が増えている。20年ぐらい前は20代後半で主任、30歳代前半で係長、30代後半で課長になったものだ。だが、10年ぐらい前から係長にはなれるが、管理職となる課長の平均昇進年齢が40代になり、しかも課長になれる人は同期の5割を切り、今では3割といわれている。部長に至っては1割以下という大企業も多い。
つまり同期の7割は非管理職の係長のままで定年を迎えることになる。それにもかかわらず「大卒総合職」の採用では「将来の幹部候補」などと、キャリアステップの幻想を振りまいている企業も多い。
また、昨今の「働き方改革」で昇進のハードルも上がっている。残業時間の削減を旗印に、短い労働時間内に効率よく仕事を終えた人を評価する動きが強まっている。
▼部下の労働時間を管理できた管理職は高評価
たとえば日本経済新聞(2017年9月16日付朝刊)によると――。
オリックスは成約件数やリースの取扱高などを評価していたが、今年度から同じ成果であれば短い勤務時間で業務を終えた社員の評価を高めるという。全社員を対象に評価結果はボーナスに反映される。さらに課長や部長などの管理職も部下の労働時間を管理できたのかを評価し、昇給や昇格の参考にする。
三井住友海上は今年度初めに「午後7時前の退社ルールを守る」「無駄な作業が生じないよう部下に明確に指示する」などの目標を設定し、上司が達成度を評価する。最初は意識改革を先行し、今後は残業時間削減の達成率など数値目標の導入も検討するという。
第一生命保険も今年度末の人事考課から、管理職に限定していた生産性を高めたかどうかの評価を全社員に拡大。業務の質を落とさずに以前よりも短時間で終わらせたり、効果的な業務の見直しを提案したりした実績を給与額決定の指標のひとつにするそうだ。
これまでは朝早く出社し、夜遅くまで仕事をしている社員を高く評価する風潮があったが、長時間労働批判やホワイトカラーの生産性向上を背景に人事評価を使って効率化を促すことにしたものだ。