注目の総選挙。野党第一党だった民進党は、希望の党にのみこまれる形になった。ビジネス社会での「買収・合併劇」を数多く取材してきたジャーナリストの溝上憲文氏は、「合併後、末端の社員だけが解雇され、路頭に迷うケースも多い」と語る。民進党議員はどんな「末路」をたどるのか――。

小が大をのみ込む「合併」で得する人損する人

10月3日、希望の党は「第1次公認」の名簿を公表した。192人の公認候補のうち、110人が民進党出身者だった。この結果、生まれたばかりの小さな政党が、野党第一党をのみ込むことがはっきりした。

民進党としては低迷する党勢を挽回するために、希望の党代表の小池百合子都知事の人気にあやかりたいという思いがあったのだろう。本来なら「対等合併」もアリのはずだが、結果的には「小が大をのみ込む」という形になった。

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政党に限らず、民間企業でも「小が大をのみ込む」という合併は決して珍しくない。だが、単純に売り上げやシェア拡大だけを狙った買収や合併は失敗するケースが多い。

有名なケースとしては、2006年の日本板硝子による英ピルキントンの買収がある。

買収後のドタバタぶりを簡単に振り返ってみよう。末端の一般社員は経営トップの決めたことをただ見ているしかないが、後になって、その甚大な影響を受けることになる。ビジネスパーソンとしてはひとごとと軽視できない。

▼売上高は約2700億円から8000億円以上に増加したが

ピルキントンはガラスメーカーとして世界シェア3位。売上高や従業員数は日本板硝子の約2倍だった。日本板硝子はピルキントンを買収した結果、売上高は約2700億円から8000億円以上に増加し、一気に世界最大手クラスの企業となった。

だが、その後、業績は低迷する。買収による負担に加えて08年のリーマンショック、10年の欧州債務危機で収益が悪化し、2012年3月期の最終損益は28億円の赤字に転落した。その後も業績不振は続き、17年3月期こそ黒字に転じたものの、16年3月期は498億円の赤字を計上している。