「ごたごた」の影響を被ったのは一般社員だった
経営体制も「ごたごた」した。
海外売上高比率が7割になったのに、日本板硝子にはグローバル経営を担える人材がいなかった。その結果、社長にはピルキントン出身の外国人が就任した。つまり外国人が経営し、日本人が監視する、という体勢をとったのだ。
ところが、その外国人社長は「家族の都合」により1年2カ月で辞めている。その後も、社長にはグローバル経営の経験がある外国人が就任したのだが、わずか2年で退任している。
相次ぐ退任の背景には、純日本的経営をつづけてきた日本板硝子の日本人経営陣が、グローバル経営の考え方や文化を受け入れられなかったことが影響しているのだろう。
結局、そうした「ごたごた」の影響を被ったのは一般社員だ。世界企業になったはずなのに、業績は低迷し、給与が上がるどころか人員削減を実施している。買収当時約、連結で約3万6000人だった社員数は約2万7000人となっており、約9000人も減っている。
▼合併のスケールメリットを出すには「人員削減」が不可欠
日本板硝子とピルキントンの合併の教訓は、小が大をのみ込んでも企業文化の融合が極め
て難しいということ。もうひとつは大所帯をしっかりと引っぱっていくリーダー不在が経営の混乱を招き、業績や従業員に大きなダメージを与えるということだ。
合併とは、昨日までのライバル企業の社員と一緒になることだ。仕事のやり方や言葉(言語や社内用語)、人事制度、企業理念や風土……。多くの違いを乗り越えながら、新たな企業理念を構築し、その下で社員を融合し、会社を成長軌道に乗せていかなければいけない。それは簡単なことではない。
また合併後にスケールメリットを出すには、「人員削減」が欠かせない。大体合併から1~2年後には重複する部門のリストラが始まり、会社にとって必要な社員とそうでない社員との選別が実施される。その間に社員間の主導権争いが激化し、優位に立つ買収側の社員が吸収された社員の追い落としを図る。