【米良】おっしゃる通りです。でも、私自身も、最初は起業したことをまわりに言えなかった。個人が個人を支援する社会をつくるという夢を語ると、変人扱いされるんじゃないかと不安だったからです。かつての私と同じように、クラウドファンディングのプロジェクトオーナーも恥ずかしくてうまくプレゼンできないかもしれない。なので、READYFORでは「気軽に夢を語っていいよね」という雰囲気をつくることを重視しました。ユーザーさんから「READYFORは個人的な夢や親しみやすい案件もたくさんある」と言われることが多いのですが、それは狙い通り。すごい人ばかりじゃなくて、隣のおじさんが好きなことをやろうとしているプロジェクトも大事にしているから、熱い気持ちを語ってくれるのです。
【田原】現時点での課題は何ですか。
【米良】高齢者の方々に広げていきたいです。インターネットをあまり使わないので。
【田原】高齢者でお金集めて何かやりたいという人もいるんですか。
【米良】いますよ。これまでの最高齢は92歳です。あと、印象に残っているのは大分の過疎地でコミュニティレストランを開いた72歳の方。地域を盛り上げるために店をやりたいけど、定年しているから金融機関はお金を貸してくれない。そこでREADYFORを利用して150万円を集めて開店にこぎつけました。
【田原】そうか。定年後だと収入がないから融資してもらえないのか。
【米良】逆に若くて実績がなかったり、新規性が高くて計算できないものも金融機関はお金を出しづらい。でも、金融機関もそういうプロジェクトを育てて将来の融資先にしたいという思いを持っています。じつはいま私たちは36の地方の金融機関と提携して、一緒にかかわる案件も出始めている。それを今後は増やしたい。
【田原】たとえばどんな案件が?
【米良】28歳の女性が、閉店した秋田の料亭をリノベーションして、「あきた舞妓」の文化を復活させて低料金で舞妓を楽しめる施設をつくろうとしていました。この案件は地元の北都銀行さんが見つけてきたもの。北都銀行さんが1800万円融資するけど、それでも足りない1400万円をクラウドファンディングで集めました。このプロジェクトのように、いまの金融でフォローしきれないものに入っていって、新しいお金の流れをつくっていきたいです。
米良さんから田原さんへの質問
Q.田原さんのモチベーションの源泉は?
小5の夏休みに玉音放送がありました。1学期まで先生は「この戦争は米英に植民地化されたアジアの国々を解放する正しい戦争だ」と教えてきました。しかし、2学期になったら同じ先生が「あの戦争は悪い戦争」と言う。ラジオや新聞も同じで、態度が180度変わった。その様子を見て、国は国民を騙すことがあるし、マスコミも信用できないと思いました。
マスコミが本当のことを伝えなかったのは、言論の自由がなかったから。だから僕は体を張って言論の自由を守りたい。かつて評論家の山本七平さんは「日本は空気の国。空気を乱すと弾かれる」と言いました。僕は生きている限り、空気を乱し続けていこうと思っています。
田原総一朗の遺言:体を張って言論の自由を守ること