【田原】READYFORはどうやって収益をあげているのですか。
【米良】プロジェクトが成立すると、集めた資金の12%を手数料としていただきます。
【田原】プロジェクトではお金が集まるものとそうでないものがありますよね。違いは何ですか?
【米良】自分の出したお金がどのように使われるのかイメージしやすいものがお金は集まりやすいです。たとえば岩手県久慈市で「もぐらんぴあ」という水族館が震災で崩れ、5年後にリニューアルオープンさせるというプロジェクトがありました。これはお金の使いみちが見えやすいからすぐ集まった。一方、社会を良くするために団体をつくりますというと、趣旨には賛同しても、何に使われるのか見えてこないので、集まりにくいですね。
【田原】具体性がないのはダメですか。
【米良】税金も同じですよね。給料の中から何十%も税金を納めているのに、「国や社会を良くするために」というだけじゃ説明が足りない。だからみんな頭では必要なことを理解していても「税金嫌だな」になってしまう。このお金でこの施設が新しくなりますとか、障害者の生活がこう変わりますといったストーリーをもっと見せてくれると変わると思う。いまはインターネットでさまざまなものが可視化されて、良くも悪くも監視社会になりました。見えなかったときのほうが世の中はスムーズに動いたのかもしれませんが、もう可視化の流れは止まりません。今後ますます、お金がどのように使われて、どのように社会に還元されていくかが注目される時代になると思います。
お金が集まる「PR」のやり方
【田原】起業に至るまでの話も教えてください。米良さんは小学校から成城学園。しかし大学は慶應大学にいかれた。どうしてですか。
【米良】中学のときの家庭教師の先生の影響が大きいです。その先生は慶應の経済学部で藤田康範先生のゼミに入っていて、大学やゼミの話をすごく楽しそうにしていました。ミクロ経済とマーケティングの話でしたが、私も興味を持って、そんな勉強ができるところに入りたいなと。
【田原】慶應に合格した後は実際に藤田ゼミに入ったのですか?
【米良】はい。そこでまた出会いがありまして。藤田ゼミは東京大学の松尾豊先生と共同研究をやっていたんです。
【田原】松尾先生って人工知能の? 僕も取材で何回かお会いしています。
【米良】そうです! 2008年ごろだったと記憶していますが、松尾先生からAIの話を初めて聞いて、これはすごいなと。それまでAIというと映画に出てくる子どものロボットの印象しかなかった。でも、AIによって人間の働き方や生き方が変わるという話を聞いて、このままどこか企業に勤めて働いても、30年後になくなる仕事をやっていたら生きていけないなと思いました。