「地に足がついた」
練習を終えた永井と、金町で一杯飲んだ。さすが下町、安くてうまい焼き鳥屋がある。永井は、ボクシングを始めてから「地に足がついた」という。家族を失った永井の心の中で、ジムの仲間が占める比重は大きいようだ。
「ボクシングを介して人と向き合うと、相手のことも自分のことも、深く知ることができる。個人スポーツなのに、地域の人たちと深く触れ合えるんです。40代でボクシングに夢中になれるのは幸せなことですよ」
私の世代にとってのボクシングは、人生一発逆転を狙うハングリーなスポーツの代名詞だったが、OFBはボクシングを「生涯スポーツ」に変えていくのかもしれない。永井の幟旗に「健康さえあれば命はいらない」とあったのを思い出した。