歩く速度でウォーキングの2倍のエネルギーを消費する「スロージョギング」とは何か!? ダイエットや筋力アップ、血糖値・高血圧の改善、アンチエイジングにも有効だという。提唱者である福岡大学・田中宏暁教授が、体を劇的に変える方法を案内する。

歩く速度でも効果はウォーキングの2倍

「スロージョギング」を提唱し始めたのは2009年頃。そして15年10月、皇后陛下のお誕生日には、天皇皇后両陛下が楽しそうにお話をしながらスロージョギングをされているお姿が報道されました。いまでは子供から高齢者まで、広く健康増進のために取り入れられていると実感します。

福岡大学スポーツ科学部教授 田中宏暁氏●東京教育大学体育学部卒、医学博士。専門は運動生理学。肥満・動脈硬化性疾患などの治療と予防、健康増進、競技力向上に有効な運動処方を主に研究。『スロージョギングで人生が変わる』など著書多数。

スロージョギングの講習会では来場者に必ず「走ることは好き?」と質問してみます。ほとんどの人の答えは「嫌い」。ところが、スロージョギングのコツとその効用を説明し終えたときには、「やってみたい」「好きになりそう」に変わっているのです。では、なぜ現代の日本人にスロージョギングが必要なのかを考えてみましょう。

1970年頃までは、日本人で糖尿病になる人はごくわずかでした。ところが80年代以降、急激に増加しています。糖尿病はじめ生活習慣病を招く健康阻害要因は主に3つ。第一に「肥満」(メタボリックシンドローム)、第2に体力・持久力の指標となる「最大酸素摂取量の低下」、第3に「筋肉量の低下」。スロージョギングは、これらを解消できるわけです。

「ウォーキングやジョギングでもいいのでは?」と疑問を持つ人もいるでしょう。ウォーキングはたしかに、気分転換や体温上昇、血行促進などさまざまな健康効果が期待できます。ただ、運動強度が低く、歩くだけでは鍛えられない筋肉がある点が惜しいところ。

じつは、ウォーキングと同じスピードでスロージョギングをすると、なんと約2倍のエネルギーを消費します。だから、余分な脂肪を落として肥満を解消するのに有効なのです。なぜ、そんなに違いが出るのかというと、使う筋肉に違いがあるから。スロージョギングでは、大臀筋(おしりの筋肉)や背筋といった腰回りの筋肉、太もも前側の大腿四頭筋、内部にあって脚を引き上げる役目を果たす大腰筋を使います。いずれも大きなサイズの筋肉ですので、エネルギー消費量も多いわけです。